藤井名人 大逆転勝利で先勝

第81期名人戦第1局が4月10日11日にホテル椿山荘東京で行われました。5万坪という広大な敷地面積をもつホテル椿山荘の庭園では、約100種1000本の椿を楽しむことが出来るようです。

先手の藤井聡太名人(21)が豊島将之九段(33)に21時22分、141手で勝利し、1勝0敗としました。

次戦は4月23日(火)24日(水)に豆まきで有名な成田山 新勝寺で開催されます。

第82期名人戦第1局

前日のインタビュー

藤井聡太名人

◇今の心境をお聞かせください。

藤井先生『明日から第1局ということで、少しずつ自分の中でも気持ちが高まってきました。』

◇豊島九段についてお聞かせください。

藤井先生『長い持ち時間では、精度の高い将棋を指しており、昨年の順位戦の戦いぶりは安定されていましたから、こちらも一手一手慎重に検討する必要があると思います。』

◇検分を終えて

藤井先生『ホテル椿山荘では1年ぶりの対局になるので、当時のことを思い出しました。』

◇最近の豊島先生について

藤井先生『最近は、色々な戦型を指されているので、こちらがそれに対し、きちんと対応していけるかがポイントになります。』

かおる

豊島先生の初手『3四歩』は予想通りでしたが、

次が、まさかの『9四歩』!

これは、振り飛車か?と皆、思いましたよね。

◇豊島先生とは、王座戦挑戦者決定戦以来ですが、この対局が名局賞を受賞しました。この点についてお聞かせください。

藤井先生『1分将棋になってからは、少なからずミスはあったと思いますが、それまでは一生懸命指しましたので、その点を評価して頂いたことに感謝します。豊島先生とは久しぶりになりますので、こちらも進歩したところをお見せ出来ればと思います。』

かおる

前回の豊島先生との対局以降、タイトル戦の成績はなんと

16勝2敗の、8割8分9厘!

豊島将之九段

◇明日から5年ぶりの復位を目指す戦いが始まります。今の心境をお聞かせください。

豊島先生『よい緊張感と高揚感があります。』

◇藤井先生とは5度目のタイトル戦となります。この点について

豊島先生『大変な強敵ではありますが、自分の力を尽くして精一杯指していきたいです。』

藤井先生とのタイトル戦成績
第62期王位戦1勝4敗 〇●●●●
第6期叡王戦2勝3敗 ●〇●〇●
第34期竜王戦0勝4敗 ●●●●
第63期王位戦1勝4敗 〇●●●●

◇検分を終えて

豊島先生『すごく懐かしいです。4年ぶりですが、もっと時間が経っているような感覚です。』

◇藤井先生についての印象をお聞かせください。

豊島先生『先日の叡王戦では、終盤の難しい将棋において競り勝っていることからも、充実されているな、という印象です。』

◇藤井先生との直近の対局では名局賞を受賞しました。この点についてお聞かせください。

豊島先生『自分なりに結構戦えた、という手ごたえがありました。しかし、終盤は時間がない中で、判断を間違えてしまいましたが、名人戦では、熱戦にしたいですし、良い将棋をお見せしたいという気持ちがあります。名局賞については、大変光栄に思います。』

かおる

この王座戦決勝では、2人とも

満足度の高い将棋が指せていたんだね。

1日目 午前のおやつ

藤井名人のおやつ豊島九段のおやつ
東京雲海クッキーサンド バター&レーズン フルーツ添え
ハチミツ入りのふわふわスポンジに練乳を使ったミルキークリームたっぷり。
フルーツ盛り合わせ
上品で、見た目もよく、量をちょうど良さそう。
「かおる」も食べたい
豊島先生と言えば、フルーツ盛り合わせが定番ですね。1年半ぶりのタイトル戦で、豊島先生も楽しみにしていたでしょう。
「かおる」も食べたい

戦型

第1局の戦型は横歩取りとなりました。通常の横歩取りの形からは変化しており、特に豊島先生が早々に新たな作戦を展開しました。

通常、横歩取りでは先手の藤井先生が有利とされる中、本局では先手の玉の位置後手の9四歩に違いが見られます。これにより、序盤から豊島先生が独自の工夫を見せています。

横歩取り棋譜2
通常の横歩取り
豊島将之九段の工夫 横歩取り
本局の横歩取り

かおる

前例は3局しかなく、藤井先生は想定外だったようだよ!

1日目 勝負めし

藤井名人のランチ豊島先生のランチ
黒毛和牛サーロインステーキ重 米茄子の鴫炊きとともに  アイスウーロン茶松花堂弁当 はつめじろ添え アイス椿茶(氷なし)
食べたいけど、「かおる」は胸やけすると思う
「かおる」も食べたい
種類がいっぱい
「かおる」も食べたい

早くも長考合戦

前例が3局しかない局面から、藤井先生が4八金を指したことで、早くも前例のない、力戦将棋となりました。

藤井先生 4八金と上がる

そのため、藤井先生が89分長考したかと思えば、お返しとばかりに、豊島先生は昼食休憩を挟んで、162分もの長考となりました。これは最近のタイトル戦では遅い進行です。

お互いが馬を作ったかと思えば、盤面から2つの馬が消え、1日目封じ手時点では、おとなしい局面となりました。両者は夜に美味しい食事を楽しむことができたのではないでしょうか。

1日目 午後のおやつ

藤井名人のおやつ豊島先生のおやつ
桜とピスタチオのマーブルケーキ料亭「錦水」の桜のきんつば
名人戦のおやつは別格だ。
「かおる」も食べたい
フルーツ盛り合わせ連投と思ったら違ったよ。
「かおる」も食べたい

藤井先生の飛車が8筋に

もし2日目から視聴した方がいれば、藤井先生が初めて「振り飛車」を採用したと思ったかもしれません。

通常、横歩取りで飛車を8筋に配置するのは珍しいわけではありませんが、藤井先生がこの戦法を採るのは珍しいことです。

これは豊島先生の戦略で、藤井先生を不慣れな形に誘導してミスを誘う作戦であると思われます。

その作戦は功を奏し、藤井先生の僅かなミスで、形勢が少し豊島先生に傾きます。人間の目から見ても、藤井先生が苦戦しているように見えます。しかし、受けが強い藤井先生は辛抱強く対応しています。

2日目 午前のおやつ

藤井名人のおやつ豊島先生のおやつ
東京雲海プリン(抹茶) フルーツ添えフルーツ盛り合わせ
写真だとフルーツがメインに見えるよ。
「かおる」も食べたい
朝はフルーツだね。
「かおる」も食べたい

2日目 勝負めし

藤井名人のランチ豊島先生のランチ
天ぷら蕎麦(冷)と椿茶(アイス)うな菊 あいのせ重
藤井先生は麺類好きだよね。
「かおる」も食べたい
タイトル戦 定番の鰻です。
「かおる」も食べたい

藤井先生の受けの技術

2日目は藤井先生のファンにとって心配の連続でした。形勢は40%を保ってはいましたが、局面は苦しく、「かおる」は敗北を覚悟していました。それでも藤井先生は必至に耐えていました。

藤井先生はよく受け将棋と言われるのですが、本局も凄い受けの手が出ます。

豊島先生から4五桂を打たれた下図では、通常、金を逃げるのですが、金を逃げても藤井玉の上、3七に歩を打たれるとかなり厳しい局面です。

豊島先生から4五桂を打たれて、かなり厳しい局面

ここで藤井先生が指した手は、3四香車

3四の香車は攻めではなく、受けの手

この香車、攻めではなく、受けの手なのです。金を取るのが狙いではなく、3七に歩を打たれないように、指した手なのです。

香車を犠牲にして、3三に歩を打たせる

一番大事な玉を守るため、香車を犠牲にしたわけですね。

豊島先生 ゴール目前で失速

しかし、21時頃、形勢が10%台まで落ち込んだ後、豊島先生に122手目 大きなミスが出ます。この結果、形勢は50%まで回復しました。

香車の田楽刺し 豊島先生の唯一のミス

香車による田楽刺しです。一見、厳しい手に見えました

かおる

『田楽刺し』とは、相手の駒が複数ある筋に香車を打つことを言うよ!

対局は1日目から数えて21時間以上続いており、両者ともに疲労が蓄積していたと思われます。

豊島先生にまさかの読み抜けがあり、5七の桂馬をタダで取られてしまいました。どうも手順前後だったようです。

かおる

『手順前後』について教えて

かおり

AとBの2つの候補がある局面で、

1.Aを指してからBを指す

2.Bを指してからAを指す

一見、同じように見えますが、将棋においては結果が大きく異なるケースがあります。

かおる

「かおる」はふだん、3手も読まずに指すこともあるから、

手順前後で失敗することは少ないかな。

かおり

3手は読んでください。

解説の佐藤康光九段が豊島玉の詰めろを読み切る

元会長で永世棋聖の佐藤先生(あだ名は怪鳥)が、互角の局面で大盤解説中に、金・銀で囲まれ、かたいと思われた豊島玉への詰めろを発見します。

88歩と馬道を止められた局面

藤井先生が8八歩とし、豊島先生の馬道を止めた局面、もし、後手が9八馬とすると、先手から3七桂という必殺の手を発見しました。

3七桂馬と跳ねだすと、豊島玉が詰めろ

藤井先生が次に3七に桂馬を跳ねると、豊島玉が詰めろになる可能性がありました。

佐藤先生の洞察力には流石の一言です。

AIは豊島先生の最善手を3八桂成と示し、この手が守りのためのものであることが明らかになりました。3八桂成は藤井先生の4八の金を取る、攻めの手と考えるのがふつうですが、実際には守りの手で、人間にとっては指しにくい手です。

佐藤先生はこの手が必要だと気づきましたが、視聴者は豊島先生が指すのかどうか、見守っていました。

しかし、豊島先生は別の手を選びました。詰めろを見逃している可能性があります。この展開に、佐藤先生は「えっ」と驚きを隠せませんでした。その後、藤井先生の姿を見て、

怪鳥(佐藤先生):『このポーズは危険です。このポーズは何か発見している雰囲気、出してます。嫌な予感がします(笑)』

と言うと、藤井先生は、なんとノータイムで3七桂馬と跳ねだしました。この時点で藤井先生の勝利確実となりました。

藤井先生の辞書に『安全勝ち』という言葉なし

最終盤、豊島先生が9八に飛車を打った局面、ふつう棋士は6六の馬を取られることを警戒し、7八に歩を打ち、安全勝ちを目指します

ふつうの棋士は7八歩と受けて、安全勝ちを目指す

ところがAIの最善手『4一銀』は形勢が99%を示しています。ということは詰みがあるのでしょうか。

決め手の4一銀

その指摘に対し、佐藤先生は必至に考え、暫くして詰みに気づきます。

怪鳥(佐藤先生):『4一銀を指されたら、なるほどと言うしかありません(笑)』

藤井先生は1分を消費し、持ち駒の「銀」をつかみました。4一銀です。藤井先生の『すーん』が出ました。その姿を見た豊島先生ががっくり肩を落とします。

かおる

藤井先生は難しい局面ではひとりごとを言うそうで、また、すべてを読み切ると、ピタッと落ち着くそうです。

これが『すーん』です。渡辺先生が名づけました!

かおる

この『すーん』は、『僕の勝ちですよ』というメッセージです。

豊島先生は残り時間をすべて使ったあと、一手も指さずに、投了されました。

この「4一銀」ですが、なんと19手詰と出ています。藤井先生はどの段階で読み切っていたのでしょうか。

かおり

2一玉と逃げては負けなので、同玉と取りますが、

5二飛車成・同玉・6三金・4一玉・5二金・3一玉・4二金・同銀・同馬・同玉・5四桂・3二玉・4二金・2一玉・3二銀・1二玉・2一銀までの19手詰(一例)