2年ぶり2度目の優勝を狙うNHK杯で三回戦進出!

9月15日に放送された第74回NHK杯将棋トーナメント二回戦で、

先手の藤井聡太竜王・名人(22)が西山朋佳女流三冠(29)を109手で破り、三回戦進出を決めました。

次戦では、澤田真吾七段冨田誠也五段の勝者との対局が予定されています。

NHK杯では、女流枠が1つ設けられており、

その枠を勝ち取った西山女流三冠が、1回戦で木村一基九段を破ったことで、注目の一局が実現しました。

現在、藤井竜王・名人は七つのタイトルを保持しており、

プロ棋士ですら対局が難しい状況の中で、西山女流三冠との対局は大きな話題を呼びました。

西山女流三冠のコメント

西山女流:準備段階から厳しいと思っていたんですけれど、一方的な内容にならないようにっていうのを意識していました。

かおる

終盤まで互角の展開が続いていたため、ハラハラしながら見守っていたよ。

西山女流三冠は敗れたけど、その内容は『負けてなお強し』と感じさせるものでした。

西山女流:事前に棋譜を拝見して棋力がどれくらい隔たりがあるか考えるんですけど、今日勝てる可能性は限りなくゼロに近いと思っていました。

かおる

ご本人は謙遜されていますが、西山女流三冠は1回戦で木村九段を破っており、この時点で藤井先生の勝利が100%とは言えないですよ。

ダイレクト向かい飛車から中盤は西山女流にもチャンスあり

戦型は、西山女流三冠が佐藤康光九段の得意戦法である

ダイレクト向かい飛車を採用し、持久戦となりました。

注目の一手は、藤井竜王・名人の45手目『8六歩』です。

玉頭の歩を突くこの手は、一見危険にも見えますが、

攻めを展開するために必要な一手だったのでしょう。

玉頭8六歩

西山女流三冠も反撃に出ました。

8六歩を咎めるべく、驚きの5九角を打ち込んだのです。

この一手に、聞き手の鈴木環那女流三段も6九角と言い間違えるほど驚いていました。

常識的には、角は6九に打ち、7八の金を狙うのが急所とされています。

しかし、ここで5九角を選択しました。

藤井聡太竜王・名人としては、8六の歩を取られるわけにはいかず、これを防ぐしかありません。

その結果、この角は反対側の1五に馬を作るしかなく、通常では考えられない一手となりました。

解説者も聞き手も、この予想外の手に驚きを隠せませんでした。

驚きの5九角打ち

西山女流三冠にチャンスが訪れたのは、73手目でした。

後手番ながら辛抱強く戦い続け、ついに藤井聡太竜王・名人のAI形勢判断が50%を下回ります。

5四に桂馬を打ち込むと、藤井竜王・名人の6六の銀が取られてしまう局面が生まれました。

73手目西山女流にチャンスgame

藤井竜王・名人としては、もう少し慎重に対応すべきだったかもしれませんが、

攻め合いに出たため西山女流三冠に一瞬のチャンスが訪れました。

しかし、残り時間の少なかった西山女流三冠は正確な対応ができず、

そこからAI形勢は大きく開いていきました。

藤井聡太竜王名人は「中盤はかなり難しい局面が続きました。

西山女流三冠の高い実力を感じました。」と振り返っています。

この局面で正しく対応されていれば、危なかったかもしれません。

藤井竜王名人の手厚い指し回し

終盤、玉頭近辺で戦いが繰り広げられる中、

87手目、危険な局面で藤井聡太竜王名人は正確に対応しました。

「8七銀」の一手で、スペシャル銀冠が完成します。

仕方なく西山女流は4九馬と攻撃駒を追加しましたが、

藤井聡太竜王・名人はいつもの飛車切りを見事に発動させました。

スペシャル銀冠完成

最後は17手詰に打ち取る

ギリギリの終盤戦となりましたが、最後は見事に17手詰で仕留めました。

一瞬で詰みを発見するあたり、さすがの一言に尽きます。

しかし、解説を務めた鈴木大介九段は、西山女流三冠の成長を絶賛していました。

攻めに定評のある西山女流三冠ですが、今回は押し引きの巧さが光りました」と評価しており、

先日の棋士編入試験で試験官を務めた高橋四段も同じ評価をしています。

藤井聡太竜王名人を相手にこれほどの将棋ができるのであれば、

棋士編入試験合格は間違いないでしょう。

それにしても、追い込まれながらも堂々と横綱相撲を見せる藤井聡太竜王名人の強さには、改めて驚かされます。