第45回将棋日本シリーズJTプロ公式戦二回戦第4局が9月21日(土)、
北海道札幌市の「札幌コンベンションセンター」にて行われ、
先手の藤井聡太JT杯覇者(22)が佐々木大地七段(29)に129手で勝利し、準決勝進出を決めました。
次戦は11月2日(土)に愛知県国際展示場「Aichi Sky Expo」で,広瀬章人九段と対戦します。
JTプロ公式戦の特徴は2つ。
1つ目は、前年の覇者、タイトルホルダー、賞金ランキング上位12名のトップ棋士のみが選出され、出場できること。
限られた精鋭によるハイレベルな戦いが繰り広げられます。
佐々木大地七段は昨年、棋聖戦5番勝負、王位戦7番勝負に出場したことで、
賞金ランキング8位での初出場となりました。
もう1つは、公開対局であることに加え、対局中に会場で解説が行われることです。
観戦者は棋士たちの高度な駆け引きをリアルタイムで楽しみながら、
解説者のコメントを通して、より深く将棋の魅力を味わうことができます。
かおる
対局者にも解説者の話しが聞こえてしまう、
凄い公開対局です。
戦型はいつもの角換わり腰掛け銀
JT杯は公式戦の中でも持ち時間が最も少ない棋戦です。
それにもかかわらず、藤井JT杯覇者は序盤から積極的な攻めを見せました。
プロ棋士たちの研究の深さにはいつも驚かされますが、
佐々木七段の飛車を取り、さらに馬を作った局面は、
まさに藤井JT杯覇者のJT杯向けの研究の成果だと思われます。
下図の局面では、藤井JT杯覇者がやや有利な形勢となっていました。
飛車を取った時点では、藤井JT杯覇者が、このまま優勢に進められるかと思われましたが、
持ち時間の短いこの棋戦では、佐々木七段の粘りが予想以上に功を奏し、形勢は二転三転しました。
112手目、佐々木七段が8七に馬を作った下図の局面では、藤井玉が孤立し、
形勢はほぼ互角ながらも、負けてもおかしくない状況だったと言えます。
この時点で両者の持ち時間はほぼ尽きており、直感に頼った指し手が続いていたものと思われます。
一瞬で決める終盤力
AIによる評価では藤井JT杯覇者が勝勢を築いていたものの、
122手目の局面では、人間の目には藤井玉がかなり危険な状態に見えました。
ここで藤井JT杯覇者は最善手とされる「6八玉」を指します。
攻めだけでなく、受けの力も卓越している藤井JT杯覇者だからこそ指せた一手かもしれません。
もしアマチュアであれば、5八玉と指して逆転負けしていてもおかしくない場面でした。
▲4二銀の王手を見て、佐々木大地七段は投了しました。
もしこの銀を△4三金で取ると、▲2一馬で△7六の馬が取られてしまい、
藤井玉を攻める手段が失われます。
また、▲4二銀を「玉」で取ると、▲5二金で即詰みとなります。
したがって、玉を上に逃がすしか選択肢がありませんが、
その場合も駒を次々に取られ、逆転は不可能と判断した佐々木七段は、129手目で投了しました。
佐々木七段は勝ち目がないと判断した局面では、
アマチュアから見れば早いと思われる段階でも、潔く投了するタイプの棋士です。
112手目の時点では形勢が五分五分でしたが、そこからわずか10分も経たずに、
下図の局面で勝負が決まりました。
解説者も驚くほどの瞬殺劇でした。