第74期王将戦第1局が1月12日・13日に静岡県掛川市「掛川城 二の丸茶室」で行われました。
後手の藤井聡太王将(22)が永瀬拓矢九段(32)を19時5分、112手で下し、
シリーズ成績を1勝0敗としました。
次戦、第2局は1月25日(土)から26日(日)にかけて、
京都市伏見区の「伏見稲荷大社」で開催されます。

藤井王将 90分の大長考
多くの棋士が予想した封じ手、▲7七桂により、形勢は互角となったものの、難局に突入しました。
後手は対策を怠れば、▲5三桂成△同金▲同桂成△同銀の展開から、
先手の▲5五角が、8二の飛車と2二の銀を両取りにする必殺手となります。
後手はこの一手に備えることが急務です。

この両取りを許してしまうと後手は潰れてしまうため、
下図の局面で藤井王将がどのように対応するかが、本局の最も重要な局面であると言っても過言ではありません。

AIによる分析では、最善手とされるのは△3三香です。
この一手でのみ、形勢を互角に保つことができますが、他の手を指すと先手優勢と評価されています。
この重要な局面で、藤井王将は時間をかけて慎重に次の一手を考えます。
視聴者が息をのんで見守る中、90分の長考の後、ついに藤井王将が手を進めました。
しかし、その手は予想外の2三金でした。この選択にはファンからも悲痛の声が上がりました。

この手は2二の銀を守る動きではありますが、先手から1二角と打たれると一気に不利に陥るため、多くのプロ棋士は避ける手です。
それにもかかわらず、藤井王将がこの手を選択したのは、1日目の終わりから形勢を悲観しており、
先手の1二角を想定し、その後の展開について深い読みをしていたと推測されます。
午後の対局で、永瀬九段はこの局面にどう対応するでしょうか。
彼も自分の有利を確信していたでしょうから、長い時間をかけて慎重な読みを進めることが予想されます。
午前のおやつ
藤井聡太王将のおやつ | 永瀬拓矢九段のおやつ |
生クリーム葛大福(純抹茶)、掛川和紅茶。 | 掛川抹茶 |
もっちりとした葛の食感と生クリームの滑らかな味わいが見事に調和し、抹茶の苦味が豊かな風味を加えています。 一緒に楽しむ掛川和紅茶は、その甘味とクリーミーな大福を引き立てる上品な渋味が特徴で、 リラックスしたティータイムにぴったりの組み合わせですね。 「かおる」も食べたい | 永瀬九段は抹茶をよく注文されます。 「かおる」も食べたい |
ランチ
藤井聡太王将のランチ | 永瀬拓矢九段のランチ |
掛川牛もも肉のカツカレー、アイスティー。 | チーズイン煮込みハンバーグ、アイスコーヒー |
サクサクの衣と柔らかな牛肉が絶妙に調和し、 濃厚なカレーソースがそれを一層引き立てています。 「かおる」も食べたい | 佐々木勇気八段と同じ作戦ですね。 2日続けて同じ注文です。 珍しくおやつを注文されていません。 「かおる」も食べたい |
永瀬九段も大長考
永瀬九段も99分の長考に加え、昼休憩も含めると合計約2時間半を要しました。
1二角打ちが有力と見られていましたが、永瀬九段が選んだのは▲7一角で、5三の一点を狙う意外な手でした。
これにより、形勢はまさかの互角に戻りました。
大きな分岐点だったと思われます。

驚愕の同金
上図から△9二飛車と逃げて、▲5三桂成とした局面。

通常、この局面では銀で取るのが一般的です。
金で取ると、相手はその金を取り返し▲8二金を打てるため、後手の飛車が取られてしまいます。
銀で取る選択なら、永瀬九段も迷わず指していたでしょう。
しかし、藤井王将の選択は意外にも金での取り方でした。
藤井王将は意図的に永瀬九段に▲8二金を打たせ、飛車を取らせる策を練っているのかもしれません。
これが藤井王将の罠だとしたら、永瀬九段はどう対応するか重大な決断を迫られることになります。
結果、永瀬九段は35分の長考に入りました。
本局初 藤井王将からの攻め
後手王がかなり危険な状況に置かれている中で、藤井王将は攻めの手を2手続けました。
これにより、永瀬玉が長手数の詰めろとなっています。

この詰めろに対して永瀬九段は正解手▲6九桂を指しました。
この時点で形勢は若干、永瀬九段が有利ですが、時間差がほとんどないため、互角と見ることができます。
藤井王将 ついに逆転
一時はかなり苦しい局面もありましたが、飛車を取らせるというまさかの罠を越えた数手後の局面で、藤井王将がついに逆転しました。
ただし、持ち時間が残り16分しかないのは心配の種です。
それでも、攻めの形が見え始めています。

投了図
逆転してからの藤井王将の指し手は、いつも通り完璧でした。
彼は最後まで油断せず、永瀬玉に迫り続けました。
勝利は目前です。
しかし、永瀬九段も簡単には諦めません。
彼の最後の勝負手、▲5四桂で王手をかけます。
この手は非常に注意が必要で、対応を誤れば逆転の可能性があります。

藤井王将は、後手玉を脅かす5四の桂馬を冷静に取り除きました。
これにより詰めろ逃れの詰めろとなります。
この局面で永瀬九段は負けを認め、頭を下げました。
本局では藤井王将の残り時間はわずか2分でしたが、見事な勝利でした。下図は投了図です。
