2月9日に放送された第74回NHK杯将棋トーナメント準々決勝第2局で、
後手の藤井聡太竜王名人(22)が佐藤康光九段(55)を96手で破り、3年連続ベスト4進出を果たしました。
次戦では、増田康弘八段(27)と対戦します。
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戦型は矢倉
準々決勝第2局は永世資格者同士の対局となりました。
佐藤康光九段は永世棋聖、藤井竜王名人は永世王位、永世棋聖を獲得しています。
先手の佐藤九段は振り飛車を指すことが多いものの、本局では矢倉を志向しました。
一方、後手の藤井竜王・名人は矢倉中飛車を採用します。
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序盤は佐藤九段の巧みな構想が光り、やや優位に進める展開となりました。
そして迎えた60手目、大きな見せ場が訪れます。
桂取りの受けの対応で逆転
藤井竜王・名人は△1五角と出て、桂取りを狙いました。
本局を解説する永瀬拓矢九段は、藤井竜王・名人の表情について
『失敗したな、というように見えた』と述べています。
AIの形勢判断も佐藤九段優勢を示していました。
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この桂取りに対し、AIは①▲2六歩、②▲2九桂、③▲4九桂の三つの手を推奨しました。
対局後の感想戦でもこの局面が検証されましたが、
佐藤九段は『どの手も指したくなかった』と語っています。
AIは佐藤九段の優勢を示していたものの、
優勢な側がAIの推奨手に自信を持てないというのも、将棋の奥深さといえるでしょう。
実戦では▲4六銀と受けましたが、これに対し藤井竜王・名人が指した△5五銀打が絶妙で、
一気に形勢が逆転し、藤井竜王・名人が優勢となりました。
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最後はいつもの飛車捨て
89手目、佐藤九段は自陣の受けがないと判断し、▲4一銀と打って藤井竜王・名人の飛車を取りに行きました。
一方、ここは飛車を逃がすのが自然にも見えますが、藤井竜王・名人は飛車を見捨て、
△5六歩と一直線に佐藤玉へ襲いかかりました。
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佐藤九段は飛車を取る以外に選択肢がなく、取った飛車で王手をかけました。
しかし、△1二玉とかわされると、勝ち目がないと判断し、ここで投了しました。
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今年も一般棋戦 優勝なるか!
タイトル戦が8つある一方で、一般棋戦はわずか4つしかありません。
さらに、前年優勝したとしても、少なくともベスト16から始まる一般棋戦で連覇を果たすのは非常に難しいものです。
昨年、JT杯で優勝を飾った藤井竜王名人でしたが、今年のJT杯はベスト4、朝日杯将棋オープン戦はベスト8、銀河戦は決勝戦で敗退。
これにより、残る一般棋戦はNHK杯の一つとなりました。
最も早指し力が問われるNHK杯で、昨年の準優勝の雪辱を果たし、見事優勝を成し遂げることができるでしょうか。
今後の展開に注目です。