藤井竜王おめでとう!杉本師匠おめでとう!
第38期竜王戦第4局は、11月12日から13日にかけて、京都市伏見区の「京都競馬場」で行われ、
後手の藤井聡太竜王(23)が佐々木勇気八段(31)に138手で勝利し、竜王5連覇を達成しました。
これにより、竜王連続5期の条件を満たし、早くも3つ目の永世称号を獲得しました。
11月13日は、杉本昌隆師匠の57歳のお誕生日です。
昨年は順位戦でクラス降格という悔しい結果となってしまいましたが、本年は再昇級を射程圏内に捉える好位置につけています。
そして、この良きお誕生日に、愛弟子の藤井聡太竜王からは「永世竜王の資格獲得」という最高の吉報が届きました。
師匠にとっても、心から喜べる、まさに飛躍の年となりそうですね。本当におめでとうございます。

佐々木八段 まさかのお昼抜き!
注目の封じ手は▲1五歩。
現地解説陣の本命の一着でしたが、直後から形勢はわずかに佐々木八段に傾き始めます。
藤井竜王は局後のインタビューで「玉頭を攻める▲4五歩からの継歩攻めをうっかりした」と正直に語ったように、
本局は2日目からかなりの苦戦を強いられていた模様です。
佐々木八段もまた、優位を確信していたことでしょう。
しかし、ここからが藤井竜王の真骨頂。
劣勢を覆す“ミラクル”の一手が飛び出しました。
100手目、それは棋士のみならず観る者すべてが目を疑う、信じられない一手でした。
タダで取られる場所に△7五桂と放ったのです。

当然、佐々木八段は同歩と応じますが、藤井竜王は間髪入れず△8三桂。
取られた桂馬の魂が、△7五桂の両取りという新たな脅威となって盤上に復活したのです。
このあまりに衝撃的で、読みの深さを要求する一手に、佐々木八段の時間は止まりました。
昼食休憩に入っても席を立たず、60分の休憩時間すべてをこの難局の検討に費やしたのです。
これまで藤井竜王のタイトル戦を数々追いかけてきましたが、
休憩時間すべてを費やし、盤と向き合い続ける棋士の姿は初めて見ました。
△7五桂という一手がいかに深い衝撃と重圧を与えたかを、雄弁に物語っています。
△5一玉で逃げ切る
佐々木八段の猛攻は止まりません。
盤上に突き刺さるような厳しい一手、▲3三歩成(と金)!
これに対し、藤井竜王は▲3三のと金をあえて放置するという、英断の△5一玉。
もしここで△3三同金などと欲張れば、大事件となるような危険な局面でしたが、
この△5一玉こそが、流れを完全に引き戻す終盤の最善手でした。
流石の一手に、盤面は一気に逆転へと向かいます。

最後は、藤井竜王が冷静に角を巧みに配置し、
相手玉を逃がさない「挟み撃ち」の詰めろをかけると、
佐々木八段はすぐに投了を決断されました。
第4局は終始、佐々木八段が優勢を保つ展開ながらも、
藤井竜王の苦境における驚異的な粘り、そして最後に放たれた「最善の我慢」が、劇的な逆転勝利へと繋がったのです。
下図は投了図です。

