1. 運命の第6局、名古屋対局場の静寂と熱気

2026年3月18日、第75期王将戦七番勝負は、歴史に刻まれるであろう重要な局面を迎えました。

舞台は愛知県名古屋市、「名古屋将棋対局場」。

高層ビルの18階、地上から切り離されたかのような静寂の中、

窓の外に広がる穏やかな景色とは対照的に、盤上には濃密な熱気が渦巻いています。

現在、挑戦者の永瀬拓矢九段が3勝2敗で悲願の奪取に王手をかけています。

一方、地元でのカド番という崖っぷちに立たされた藤井聡太王将。

通算成績は藤井王将の34勝15敗と大きくリードしていますが、注目すべきは「今期」の直接対決です。

その星取りは、なんと6勝6敗の五分。

絶対王者がここまで苦戦を強いられ、互角の星を並べられたことは極めて異例。

しかし、王者の瞳に悲壮感はありません。

藤井王将は直前の棋王戦で、終盤の死闘を制して勝利を掴んでいました。

「精神的に良くない状態だった」と自ら振り返る不調の波を、

その一勝を「良い材料」として乗り越え、回復の兆しを見せています。

果たして、この名古屋の地で永瀬九段が新たな扉を開くのか、それとも王者が再びその牙城を守り抜くのか。

第75期王将戦第6局1日目

午前のおやつ

藤井聡太王将の午前のおやつ永瀬拓矢九段の午前のおやつ
玄米粉のハードバウム
飛騨りんご100%ジュース
フルーツ盛り合わせ
コーヒー、紅茶
一般的なふんわりしたバウムとは異なり、
表面はガリッ、ザクッとした力強い歯ごたえ。
玄米粉ならではの香ばしさが、噛むほどに口の中に広がります。
「かおる」も食べたい
旬の果実が色彩豊かに並ぶ、
まさに「天然のサプリメント」ボックスです。
「かおる」も食べたい

2. 衝撃の開幕:開始わずか30分で盤上に走った閃光

午前9時。藤井王将の▲2六歩から始まった一局は、現代将棋の王道である「角換わり」の形を辿ります。

誰もが長丁場の神経戦を予想したその時、わずか開始30分で盤上に激震が走りました。

午前9時30分、永瀬九段が放った△7五歩。

定跡のレールを自ら脱ぎ捨て、超速攻を仕掛ける異例の一手です。

立会人の屋敷伸之九段が「1時間考えてもおかしくない」と目を剥くほどの意表を突く仕掛けでしたが、

藤井王将の対応はそれを上回る凄みを感じさせるものでした。

わずか15分の少考。

迷いなく放たれた▲7五同歩という応手に、屋敷九段は感嘆の声を漏らしました。

「凄いですね。こういう変化も研究しているということだと思います」

研究勝負の極限を超え、二人は一気に未知の深淵へと足を踏み入れたのです。

ランチ

藤井聡太王将のランチ永瀬拓矢九段のランチ
叉焼飯セット
中国茶 鳳凰単叢(ほうおうたんそう)
麻婆豆腐 点心セット
コーヒー、紅茶、ウーロン茶
いちごのショートケーキ
じっくりと焼き上げられ、表面は香ばしく、中はしっとりと柔らかな叉焼。
甘辛い特製ダレが絡んだ肉厚な一切れが、
白米の甘みを最大限に引き出します。
「かおる」も食べたい
唐辛子の辛みと山椒のシビれが脳をダイレクトに叩き、
午後の長考に向けた「闘争心」を再点火。
「かおる」も食べたい

3. 「名古屋はホーム」:聖地が生んだ永瀬拓矢の安心感

永瀬九段にとって、この名古屋は「敵地」ではありません。

むしろ、自身の棋士人生を支えてきた大切な場所です。

彼はかつて、藤井王将との「VS(練習将棋)」を行うために、杉本昌隆八段の門を50回以上叩きました。

愛知県全体での訪問回数は100回近くに及びます。

この名古屋こそが、二人が互いの技術を磨き合い、ライバルとしての絆を育んだ「聖地」の原点なのです。

名古屋駅13番線ホームにある「きしめん」の店で、「大盛りに卵を添えて」味わった記憶。

慣れ親しんだ土地感は、彼に「ホーム」に近い安心感を与えています。

「藤井さんとの対局で(移動を)遠いと感じたことは一度もありません。」

移動中すらも藤井との対局を思えば高揚感に包まれる。

その純粋なまでの闘志が、敵地での超速攻という大胆な決断を後押ししたのでしょう。

午後のおやつ

藤井聡太王将の午後のおやつ永瀬拓矢九段の午後のおやつ
いちごのショートケーキ
アイスティー
煎茶とマスカルポーネのタルト
コーヒー、中国茶 鳳凰単叢、アイスティー
真っ白な生クリームに、鮮やかな赤のいちごが映える完璧なビジュアル。
名古屋の洗練されたパティスリーを思わせる、端正な佇まいです。
「かおる」も食べたい
煎茶の上品な渋みと香りが、
マスカルポーネチーズの濃厚で
シルキーなコクを鮮やかに引き立てます。
「かおる」も食べたい

4. AIの評価を揺るがした「△8八歩」:人間が生み出す複雑な迷宮

午後の対局は、互いに1時間を超える長考を重ねる「読み合いの深淵」へと突入しました。

そんな1日目の最終盤、永瀬九段が放った△8八歩が、AIの評価値を大きく揺さぶりました。

この瞬間、AIの評価値は後手(永瀬)の50%から、先手(藤井)の60%へと10%も振れました。

戦術的には、先手玉の逃げ道を塞ぐ「壁系」を強いる手ですが、

自らの持ち歩を消費し、AIの目には「」と映る一打です。

しかし、これこそが永瀬九段の真骨頂です。

数値上の最善を追うのではなく、盤上を複雑な迷宮へと変え、相手に「間違えれば即死」という心理的重圧をかける。

AIが嫌う不自由な「壁」を逆手に取り、泥沼の戦いへ引きずり込むその一歩は、まさに執念の勝負手でした。

5. 55手目の封じ手と、決着の2日目へ

午後6時、藤井王将が50分の考慮を費やし、55手目を封じました。

屋敷九段の予想は、▲8八同角か▲8八同金。

角で応じれば激しい攻め合いへ、金で応じれば重厚な持久戦へ。

一手の選択が、シリーズ全体の運命を左右します。

「精神状態は改善傾向にある」と語る藤井王将と、

名古屋という「ホーム」でチャンスを掴み取ろうとする永瀬九段。

二人の絆が交錯し、磨き上げられた技術が激突する2日目。

果たして永瀬九段が投じた「△8八歩」は、悲願への導火線となるのか、

それとも自らを焼き尽くす破滅の一歩となるのか。

名古屋の空に夜が明け、決着の時は静かに近づいています。