第76回NHK杯テレビ将棋トーナメント2回戦で実現した、藤井聡太NHK杯選手権者と、

将棋界の教授として親しまれるベテラン勝又清和七段の初手合。

戦型は互いに居飛車を選択し、勝又七段の「矢倉」に対し、藤井選手権者は「雁木(4一玉型)」で対抗する難しい中盤戦へと突入しました。

50%

中盤、両者の間で「千日手(同一局面が4回出現し引き分け・指し直しとなるルール)」が成立しそうなループ手順が発生します。

しかし、ここで勝又七段は決断を迫られました。

なぜなら、先手番の勝又七段にとって、千日手にして後手番での指し直しになることは戦術的にやや不利となるからです。

葛藤の末、勝又七段は持ち時間をたっぷり投入して「6四角」と銀を食いちぎり、千日手を打開して勝負に出ました。

しかし、この決断が、藤井選手権者の破壊的な攻めを引き出す引き金となってしまいます。

1.一瞬の瞬殺劇

勝又七段が千日手を打開した直後から、藤井選手権者の猛烈なラッシュが始まりました。

「8七歩」の鋭い一打から「3九角」の打ち込み、さらに馬を作って敵陣を翻弄します。

64%

解説の木村一基九段も「これは激痛」と唸った「7八香車」の王手など、一切の隙がない攻撃が続きます。

勝又七段も必死の粘りを見せますが、藤井選手権者の読みは完璧でした。

勝又玉は上部脱出を阻まれ、9九玉へと引きずり下ろされます。

最後は藤井選手権者が「6ニ金」と冷静に金を着手したところで、勝又七段が投了。

わずか110手での「瞬殺劇」となりました。

早指しという極限のプレッシャー下で、これほど正確かつ最短手順の寄せを実現できる藤井選手権者の圧倒的な終盤力が光った一局でした。

2.JT杯での激闘と復興支援

NHK杯と同様に短い持ち時間で行われる「JTプロ公式戦(JT杯)」でも、藤井王将を巡る劇的なドラマがありました。

熊本市で開催されたJT杯2回戦(八代弥八段戦)は、「熊本地震復興応援対局」として行われ、

なんと「1手につき1万円」が熊本県に寄付されるという特別な趣旨で指されました。

この対局でも、第1局は激しい攻防の末に「千日手」が成立します。

指し直しとなった第2局、藤井王将は得意の角換わり腰掛け銀を採用しますが、中盤の緩手から苦境に陥り、惜しくも八代八段に敗れました。

これにより、藤井王将はプロデビュー以来「通算100敗目」という節目を迎えることになります。

しかし、この2局の合計手数(第1局102手、第2局108手)により、総額210万円が熊本県に寄付されることとなりました。

敗北の悔しさの中にも、将棋を通じて社会に貢献するというプロ棋士たちの美しい熱戦の姿が、多くのファンを感動させました。