3月2日に放送された第74回NHK杯将棋トーナメント準決勝第1局で、
先手の藤井聡太竜王名人(22)が増田康弘八段(27)を167手で破り、3年連続決勝進出を果たしました。
決勝戦では、郷田真隆九段(53)と近藤誠也八段(28)の勝者と対戦します。

2度の絶対絶命を乗り切る
本局は、棋王戦第3局と類似した「角換わり」の戦型で進行しました。
中盤以降、増田八段が優位に立ち、徐々に形勢の数字を悪くしていきました。
ついにAIが1%と表示します。
113手目 藤井玉に詰みが発生
112手目、増田八段は藤井陣の守りの要である『6三馬』を攻めるため、△5一桂を打ちます。
この馬がいなければ、藤井玉は△5四金で即詰み。
困った藤井竜王・名人は、おそらく自玉の詰みを承知の上で、馬で7二の香車を取りました。
この手には、もし7六の竜で馬を取ってくれれば、▲1三香、△同玉、▲2二銀、△1二玉、▲1三金の五手詰があるという狙いがありました。
しかし、AIの形勢判断は1%を示していました。
実際には、△5四金打から21手詰が成立していたようです。
ところが、増田八段も30秒将棋の中で指していたため、読み切ることができず、詰ますことはできませんでした。

122手目、さらに必死をかける増田八段
113手目の詰みは逃れたものの、藤井玉は依然として瀕死の状態。
122手目の△3二銀の王手が、あまりにも痛烈です。
これは同銀成で取りたいところですが、その場合▲4三金の一手詰。
これを防ぐために、同銀成らずで取る手もありますが、その場合は▲2二金と王手され、△3二の銀を取られて敗勢となってしまいます。
そこで、3二の銀を同玉と取りましたが、この瞬間、必死がかかりました。

かおる
「必死」とは、相手がどう対応しても
詰みを逃れることができない状況を指すよ。
ここで▲7二竜と王手すれば、増田八段の勝ち筋でした。
しかし、時間に追われる中で、増田八段はこの決定的なチャンスを逃してしまいました。
鮮やかな逆転の桂
137手目▲2四桂の王手
劣勢をギリギリで凌いでいた藤井竜王・名人に、ついにチャンスが訪れました。
AIの形勢判断は78%を示しています。
解説の都成七段も、『どう指したらいいかわからない』と述べる中、
藤井竜王・名人は持ち時間30秒の中で、タダの地点に最善手▲2四桂を打ちました。
この桂馬は、馬でも歩でも取りにくく、さらに桂馬を残せば3二銀を打つことができません。
増田八段は、やむを得ず歩で取りました。
その結果、藤井竜王・名人はここから攻め続け、自玉の安全も確保していきます。

149手目▲2五桂で王手
増田八段の馬を消すことに成功した藤井竜王・名人は、149手目、再びタダの地点に▲2五桂と王手をかけます。
ここで増田八段は、やむを得ず同歩と取りますが、さらにタダで△2四銀と王手。

詰将棋選手権5連覇の藤井竜王・名人にとって、解けない問題はないということでしょう。9連続王手の末、増田八段は投了しました。
この両者の対局は、最後までハラハラする展開が多いですが、今回も藤井竜王・名人が終盤力を発揮し、見事な逆転勝利。
3年連続の決勝進出を決めました。
昨年は佐々木勇気八段に敗れ、惜しくも準優勝に終わりましたが、今年はどうなるでしょうか。非常に楽しみです。