叡王戦 挑戦者決定戦 解説ありで放送
3月19日(火)10時~ 叡王戦 挑戦者決定戦 (永瀬拓矢九段 対 伊藤匠七段) がABEMAにて、解説ありで放送されます。
久しぶりのことではないでしょうか。藤井先生がまだ七段だった頃、対局の放送には当然のように解説が付いていました。
ところが、現在は藤井先生以外の対局については中継が少なく、ほとんど解説が付かない状況です。
しかし、今回の決勝戦は異なります。解説あり(解説者:屋敷伸之九段、遠山雄亮六段、聞き手:加藤結李愛女流初段、脇田菜々子女流初段)で放送されます。
これは、注目度の高さが違うことを示しています。
かおる
「かおる」はすごく楽しみ
王座を失い絶望していた永瀬先生ですが、年明けから復調の兆しを見せ、現在は絶好調の様子です。この勢いで叡王挑戦権を獲得できるでしょうか?
それとも、竜王戦と棋王戦で立て続けにタイトル挑戦を決めた伊藤先生が、3度目の挑戦権を獲得するのか、見どころが満載です。
永瀬先生が挑戦権を獲得した場合、藤井棋聖への挑戦以来2年ぶりの挑戦となります。
前回は、初戦で千日手を2回経て勝利し、第2局でも優勢に進めていましたが、終盤で逆転され、最終的に1勝3敗で敗れました。
一方、伊藤先生が勝利すれば、昨年の竜王戦と今年の棋王戦に続き、3度目の挑戦となります。初のタイトル獲得成るか、大いに注目です。
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タイトル戦 持ち時間
これまでタイトル防衛に一度も失敗していない藤井先生ですが、持っているタイトルをいずれ失う可能性にファンも心の準備をしておく必要があるかもしれません。
では、最も危険にさらされているタイトルはどれでしょうか?この答えははっきりしています。
それは、現在の叡王と、最後に獲得した王座です。これらにはどのような共通点があるのでしょうか?
その答えは、持ち時間に関係しています。
棋戦名 | 持ち時間 |
竜王戦 | 8時間 |
名人戦 | 8時間 |
伊藤園お~いお茶杯王位戦 | 8時間 |
叡王戦 | 4時間 |
王座戦 | 5時間 |
棋王戦コナミグループ杯 | 4時間 |
ALSOK王将戦 | 8時間 |
ヒューリック杯棋聖戦 | 4時間 |
表を見ると、持ち時間が短い棋戦が3つあります。それは4時間の「叡王戦」「棋王戦」「棋聖戦」です。
しかし、先ほどの指摘では棋戦が2つだけでした。一つは叡王戦で、もう一つは王座戦と記述しました。
では、何が違うのでしょうか?
タイトル戦に詳しい読者の皆様ならご存じかもしれませんが、将棋の持ち時間には「ストップウォッチ方式」と「チェスクロック方式」の2種類があります。
これらは持ち時間の計算方法に違いがあります。その違いを表でまとめてみました。
ストップウォッチ方式 | チェスクロック方式 | |
最大の特徴 | 1分未満の消費時間は切り捨て | 秒単位で持ち時間が消費される |
メリット | 59秒以内で指すと持ち時間は減らない。 | 残り時間は常にタブレットに表示されている。 |
デメリット | 記録係の仕事量が多い。 | ごく一部の先生を除いて デメリットはないと言っていい。 |
藤井先生は 有利?不利? | 藤井先生は得意としており、最後に時間を残すことが可能。 昔、永遠の3分などと言われたことがある。 | 時間を残すことが出来ないため、終盤のミスにつながりやすい。 |
8つのタイトル戦のうち、藤井先生にとって得意ではないとされるチェスクロック方式を採用しているのは「叡王戦」と「王座戦」です。
藤井先生 チェスクロック方式採用のタイトル戦成績
これまでに藤井先生は、チェスクロック方式を採用したタイトル戦を4回経験しています。
その成績を表にまとめてみました。
棋戦名 | 対戦相手 | 勝敗数 |
第6期叡王戦 | 豊島将之叡王 | 3勝2敗 |
第7期叡王戦 | 出口若武六段 | 3勝0敗 |
第8期叡王戦 | 菅井竜也八段 | 3勝1敗 |
第71期王座戦 | 永瀬拓矢王座 | 3勝1敗 |
数字だけを見れば、依然として優れた成績を残しており、心配する必要がないかもしれません。
しかし、気になる対局が2局ありましたので、それらについて詳しく見てみましょう。
第6期叡王戦第2局
本局では、藤井先生がほとんどの時間優勢で進めていましたが、下記の局面で時間の切迫により悪手を指し、珍しく逆転負けを喫しました。
下図の局面ではABEMAの中継では藤井先生の89%!
藤井先生は豊島先生の飛車に狙いを定め、香車を打ちました。
この時、藤井先生の残り持ち時間は3分、豊島先生は2分でした。
この局面で、豊島先生から、解説の先生も驚く、勝負手が放たれます。以下がその図です。
豊島先生は、タダのところに銀を打ちました。
この勝負手に対し、持ち時間が少ない藤井先生は、もしかすると焦りからか、正確な対応をすることができませんでした。
その結果、数手後に形勢は50%を下回る方向へと進み、最終的に第2局を落としてしまいます。
もしストップウォッチ方式が採用されていたら、そのまま勢いを保って勝利する可能性が高く、最終戦にもつれ込むことがなかったかもしれません。
最終局で先手番を得るという幸運も手伝って叡王獲得に繋がりましたが、チェスクロック方式に不安を覚えます。
八冠を決めた王座戦第4局
本局では、永瀬先生の研究が勝っており、永瀬先生が快勝する展開が予想されました。
しかし、藤井先生の中盤での巧みな指し回しにより、形勢が徐々に互角にまで回復し、終盤は一時的に藤井先生が優勢に立ちました。
以下の図はその局面を示しています。
ABEMAの中継において、藤井先生の83%でした。
しかし、その数字を維持する手は一手のみです。その手が次の図。
かおる
こんなところに飛車を打つなんて
藤井先生でも無理でしょ!
この時、優勢を維持する手「4六飛車打」は非常に困難で、流石の藤井先生でも指すことは難しいだろうと「かおる」は思っていましたし、実際に指されませんでした。
結果として、永瀬先生が再び優勢に転じ、多くの人が永瀬先生の勝利を予想しました。
しかし、最終盤で永瀬先生の大悪手により、藤井先生が王座を獲得し、八冠達成となったわけです。
ところが、感想戦で驚くべき事実が明らかになりました。
藤井先生が優勢になった局面で、指せないだろうと思われていた一手を、藤井先生は実際に考えていたのです。
では、なぜその手を指さなかったのでしょうか。それは、時間がたった1分しかなく、確信を得ることができなかったからだそうです。
もう数分の時間があれば、優勢を保ちながら勝利していたはずでした。
これは、たとえ藤井先生であっても、1分将棋では最善手を連続して指すことが非常に難しいことを示しています。
藤井先生 叡王防衛なるか!
第6期叡王戦で豊島先生との対局で苦戦を強いられたことからも、居飛車のトッププレイヤーが相手の場合、チェスクロック方式のタイトル戦では、必ずしも勝利が約束されるわけではないと言えます。
今回、レーティング2位の永瀬先生か、または3位の伊藤先生が挑戦者となるため、どちらが挑戦しても熱戦が期待されます。
最近のタイトル戦は全勝防衛が続いていますが、今回はファンも特別な気持ちで応援する必要があるかもしれません。