1. 2日制初のフルセット
将棋界の頂点に君臨する藤井聡太王将。
これまで36回ものタイトル戦を戦い抜き、数々の記録を塗り替えてきた彼にとって、
今回の第75期王将戦七番勝負は、未知の、そして特別な舞台となりました。
藤井王将にとって、2日制のタイトル戦で最終局までもつれ込む「フルセット」は、棋士人生で初めての経験なのです。
対峙するのは、執念の棋士・永瀬拓矢九段。
振り駒の結果、藤井王将の先手番と決まった運命の第7局は、
1日目から「最強の矛」と「究極の盾」が火花を散らす、濃密な心理戦の場と化しました。

午前のおやつ
| 藤井聡太王将の午前のおやつ | 永瀬拓矢九段の午前のおやつ |
| 珈琲わらびもち アイスティー(ストレート) | あまおうタルト 焼きドーナツ(オレンジ) フレッシュいちごミルク はちみつレモンのソーダ割り |
| 艶やかな漆黒のわらびもち。 まるで盤上の「駒」のような、 重厚感と透明感を併せ持つ美しい佇まいです。 「かおる」も食べたい | 「苺・オレンジ・レモン」と、果実の力を全方位から取り入れる、 まさに「ビタミンと糖分の飽和攻撃」。 4品を盤横に並べるその姿は、 藤井王将の牙城を崩さんとする永瀬九段の「不退転の決意」そのものです。 「かおる」も食べたい |
2. 衝撃のタイムマネジメント:12分 vs 2時間のコントラスト
対局開始とともに盤上に流れたのは、異常なまでの「静」と「動」の対比でした。
永瀬九段がわずか12分(最終的には31分)という、まるで1分将棋のような驚異的なペースで指し進める一方で、
藤井王将は序盤から深く沈思し、1時間、2時間と貴重な持ち時間を削っていきます。
立会人の桐山清澄九段は、このコントラストを鋭く指摘しました。
「永瀬さんのほうは、この形になれば、こう指そうと温めていた順でしょうね」
永瀬九段が用意した「研究」という名の壁。
それに対し、藤井王将は現場で一から「読み」を構築し、対応を迫られる。
午前中の盤面は、永瀬九段が主導権を握る「研究の壁」がそびえ立っているかのような錯覚を抱かせました。
ランチ
| 藤井聡太王将のランチ | 永瀬拓矢九段のランチ |
| ハンバーグ弁当 自家製ジンジャーエール | デミグラスと温玉チーズハンバーグ・ご飯付き おにぎりセット(豚汁・漬物・塩むすび・こんぶ) 焼きドーナツ(バニラ) ホットコーヒー(濃さ:ストロング) フレッシュいちごミルク |
| お肉本来の旨みを閉じ込めたジューシーな食感に、 コク深いデミグラスソースが絡み合います。 ご飯が進むしっかりとした味付けが、 午後の究極の消耗戦を支える「良質なタンパク質」と 「炭水化物」を効率よく補給します。 「かおる」も食べたい | 濃厚なデミグラスソースに、とろけるチーズと温泉卵。 「脂質・タンパク質・糖質」を最高密度で詰め込んだ、 エナジーの塊です。 「かおる」も食べたい |
3. 「端歩」を捨てた超速の構想:永瀬研究の核心
戦型は現代将棋の最前線「角換わり腰掛け銀」。
ここで永瀬九段は、自身の研究の結晶とも言える独自の工夫を披露しました。
△8一飛から△3一玉、さらに△2二玉と王様を深く囲う中で、
あえて「端歩(はしふ)」の受けを省略したのです。
通常、端歩を突かれると受けるのが常識ですが、
永瀬九段はそれを「手得(てどく)」、すなわちスピードへと変換しました。
受ける一手を省くことで、相手より早く理想の陣形を完成させる。
この「超速」の構想により、データベースの前例は消え、対局は未知の領域へと突入しました。
しかし、藤井王将もただ黙ってはいません。
永瀬九段がスピードを優先したのに対し、藤井王将は▲9五歩と端を突き越し、自陣の「懐の広さ」を確保しました。
この「永瀬のスピード」と「藤井の厚み」の対比が、のちの戦いに大きな影を落とすことになります。
午後のおやつ
| 藤井聡太王将の午後のおやつ | 永瀬拓矢九段の午後のおやつ |
| 焼きドーナツ(抹茶) はちみつレモンのソーダ割り | 棋士まんじゅう(ミルク餡・チョコ餡) 焼きドーナツ(メープル) フレッシュいちごミルク はちみつレモンのソーダ割り ホットコーヒー(濃さ:ストロング) |
| 揚げずに焼き上げることで、 素材の風味を最大限に活かしたヘルシーかつ満足感のある一品です。 「かおる」も食べたい | 関西将棋会館名物の「棋士まんじゅう」。 2種の餡を交互に口にすることで、「脳への即効性エネルギー」を多角的に補給。 和の甘みが、極限まで削り取られた集中力を下支えします。 「かおる」も食べたい |
4. レジェンドの視点:谷川十七世名人が見抜いた「藤井王将の対応力」
控室に姿を見せた谷川浩司十七世名人は、局面を冷静に分析していました。
永瀬九段の猛攻に対し、藤井王将は着実に「桂得」という実利を手にします。
対する永瀬九段は馬を作って対抗しますが、谷川十七世名人の評価は明快でした。
「ここまで永瀬さんの研究に対し、藤井さんがうまく対応していますね。
そういった点からおそらく多くの棋士目線、またAIの評価でも先手(藤井王将)が少し指せているとの見解になると思います。
後手は馬を使って攻めていければよいのですが、具体的な手段がいまは特に見えません」
研究の壁を、藤井王将が卓越した対応力で解体し始めた――。
レジェンドの言葉は、盤上の天秤が藤井王将側に傾きつつあることを示唆していました。
5. 封じ手に込められた3時間の苦悩
しかし、1日目のクライマックスは夕刻に訪れました。
午前中、あれほど軽快に飛ばしていた永瀬九段の時計が、ぴたりと止まったのです。
永瀬九段が作った馬は、強力な武器であると同時に、諸刃の剣でもありました。
例えば「△5九馬」と踏み込めば、藤井王将は「▲4七金」と引いて馬の退路を断ち、
さらに「▲3四歩」から「▲7七角」という王手で馬を抜き去るという、恐ろしい捕獲作戦を用意していたのです。
さらに「▲2九飛」の引きも加わり、永瀬九段の馬は常に危険に晒されることになりました。
「動き方の難しさ」という深淵に足を取られた永瀬九段は、ここで「2時間54分」という凄まじい大長考に沈みます。
18時の封じ手時点での消費時間は以下の通り。
- 藤井王将:3時間31分
- 永瀬九段:3時間54分
午前中の大差は消え去り、時間の砂時計は逆転。
永瀬九段の長考は、研究の壁が崩れ、純粋な「読み」の戦いへと引きずり込まれた苦悩の証だったのかもしれません。
