本戦決勝  主な対局結果

4月13日(土)19時にABEMAで放送されたABEMA地域対抗戦では、チーム中部が優勝候補のチーム関東Bを、5勝1敗で下し、優勝しました。

決勝はチーム戦というより、チーム関東Bの5人がどうやって藤井先生から2勝を挙げるか、という戦いでした。結果として、伊藤先生を除く他の4人が全員敗れ、藤井先生の強さが際立った大会となりました。

藤井先生は現在、タイトル戦においても16連勝中という驚異的な成績をたたき出しており、昨年からさらにレベルが向上しているのかもしれません。

詳細な結果は以下の表の通りです。

本戦決勝第1局先手 服部慎一郎後手 伊藤匠
第2局後手 服部慎一郎先手 永瀬拓矢
第3局先手 藤井聡太後手 永瀬拓矢
第4局後手 藤井聡太先手 増田康宏
第5局先手 藤井聡太後手 森内俊之
第6局後手 藤井聡太先手 渡辺明

第3局 藤井先生 対 永瀬先生

本局は非公式戦ではありますが、永瀬先生が秘策を出していきました。それは棒銀ではなく、棒金です!

かおる

永瀬先生は、隠し玉をいくつ持っているのだろう?!

永瀬先生の棒金

初めて見る局面にもかかわらず、藤井先生は冷静に対応し、永瀬陣に攻め込みます。

下記の局面で、永瀬先生は局後に「全然見えませんでした」と述べた、攻防の手『9六角』が決め手となりました。

藤井先生の9六角

次に、永瀬先生から8七に銀を打ちこまれると、「同玉」に、「6九飛車成」と、金を取られて先手玉(藤井先生)はピンチになります。「9六角」はその銀を受けており、攻めでは6三に角を飛びこむチャンスです。

この手は控室の豊島先生も指摘しており、タイトル戦に挑む棋士の卓越した技術を感じさせました。

本局では、藤井先生が優勢を保ち続け、最終的に勝利しました。その後、永瀬先生は控室に戻り、次に対局する増田先生にアドバイスを送ります。

永瀬先生『本日の藤井先生は、まだエンジンがかかってないよ!

藤井先生の勝利は快勝に見えましたが、数多くの練習対局を経験している永瀬先生は、「今の藤井先生は本来の実力ではない。」と判断しています。たとえ八分の力であっても快勝できる藤井先生は、本当に恐ろしい存在ですね。

かおる

どの手で「八分の出来」と思ったのだろう。

最後の決め手が、いつもほどの切れがなかったのかもしれないね。

第4局 藤井先生 対 増田先生

戦型は、増田先生が得意とする「相掛かり」となりました。

かおる

増田先生は一時、メガネからコンタクトにしていましたが

最近はメガネに戻ってます。彼女さんに言われたのでしょうか。

動きがあったのは下図の局面です。

藤井先生の次の手に注目!

ここでカメラはチーム中部の控室に切り替わり、杉本先生が『3三桂は跳ねにくいから、3三金?』と提案します。

これに対して、八代先生が『3三桂だけはダメです!』と強く否定しました。序盤でプロが手を否定するということは、その一手が明確に不利であるという意味です。にもかかわらず、藤井先生が選んだのは驚きの『3三桂』でした。

八代先生『え~!』

豊島先生・服部先生『・・・』(驚きの表情を見せます)

かおる

藤井先生、これは。

非公式戦だから、ちょっと遊んでみよう、ということでしょうか。

かおる

藤井先生は昔、『どんな手も切り捨てず、考えてみることが大事』と言ってたよ。

今回もそんな手で、プロなら一目ダメと判断はするけど、何かいい手段がないか、やってみようという判断だったかもしれないね。

タイトル戦において、いきなりマイナスの手を指すのはリスクが大きすぎるので、今回は非公式戦ということもあり、何かを試したかったのかもしれません。

しかし、形勢は八代先生の指摘通り、少し増田先生に振れました(藤井先生45%)。 

まさかの一手に直面した増田先生は長考に入りました。この時の時間消費が、後の終盤での逆転の契機となった可能性があります。

下図はさらに数手進んだ局面です。AIが推奨する次の一手「4七成桂」に永瀬先生が驚いています。

増田先生が角で飛車を取った局面

永瀬先生『そんな手、見たことないですよ。』

渡辺先生『この手、得なの?』

そんな控室の会話のあと、藤井先生は当然のように、AI最善手「4七成桂」を指します。

永瀬先生驚く4七成桂

渡辺先生『え~』

永瀬先生『すごいですねえ。でも、意味がわからないですけど。』

かおる

永瀬先生がわからないなら、誰も解説できません。

確かに、その時点では予見できませんでしたが、終盤には増田先生の玉が攻めやすい形になりました。その結果、逆転勝利となります。詰将棋が得意な藤井先生には、数十手先の展開が見えていたのでしょう

お互いに時間がなくなって、サクサク進んだ108手目の局面。

増田先生59%優勢

この時、形勢は増田先生の59%となっていました。増田先生も局面の指しやすさを感じていたようですが、持ち時間が数秒しか残されていないため、正確な手を指すことができませんでした。控室では

豊島先生『藤井先生に、ペースが来た気がする。』

と発言がありましたが、AIも藤井先生の優勢と評価しています。豊島先生の形勢判断も正確でした。

藤井先生の持ち時間は、ほとんど残っていませんでしたが、正確な攻めで増田先生の玉を投了に追い込みました。

第5局 藤井先生 対 森内先生

追い込まれたチーム関東Bは、棋士チェンジを行い、伊藤先生から森内先生にバトンタッチしました。渡辺先生からは

渡辺先生『貫禄で、どうにかして下さい(笑)。』

渡辺先生のお願いを受けた森内先生は、藤井先生との対戦を楽しみにしており、入念に準備をしていたようです。

また、この二人は過去のABEMAトーナメントで一度対戦しており、その時は森内先生が勝利を収めました。しかし、控室の藤井先生からは

藤井先生『対戦したことはほとんどないのかなと思います。』

かおる

「え~」

藤井先生は、都合の悪い記憶は、消去してしまうタイプのようです(笑)。素晴らしい!

本局では藤井先生が序盤から自由に指し進め、その間に控室からは驚きの声が上がりました。

形勢は途中で藤井先生の43%まで後退しました。

タイトル戦では見られないような自由な指しまわしです。「自由」というと、山崎先生や糸谷先生でしょうか。

藤井先生もたまには、そんな将棋を指してみたかったのかもしれません。

次々と予想外の手が続きます。森内先生も驚いたことでしょう。

時間が十分にあれば正確な対応が可能だったかもしれませんが、フィッシャールールではそれが出来ず、形勢は藤井先生の優勢に転じます。結局、藤井先生がその優勢を維持して勝利しました。

第6局 藤井先生 対 渡辺先生

最終局では、チーム関東Bの監督である元名人の渡辺先生が出場しました。

接戦の場合は永瀬先生が出場する予定でしたが、対戦成績が1勝4敗と大きく不利であったため、渡辺先生が大会初勝利を目指して登場しました。

渡辺先生『1勝4敗なので、最後に記念で出させてください(笑)』

渡辺先生は笑っていましたが、決勝進出が決まった際には「何とか1勝したい」とコメントしていました。

このことから、藤井先生から1勝を挙げてチーム中部を焦らせるという強い意志を持って出場していることは明らかです。

ところで、画面を見皆さんは、違和感を感じませんでしたか?

画面には、渡辺先生のそっくりさん?、らしき人が出ていますが、何か変です。渡辺先生、コンタクトをしていました。時々、コンタクトを使用されているようですが、「かおる」は初めて見ました!

かおる

メガネは、体の一部だから、大きく印象が変わるね。

戦型は渡辺先生の得意とする矢倉です。おそらく研究が十分にされている形で、両者はほぼノータイムで49手目まで進め、形勢は互角です。

渡辺先生のお得意の矢倉から、両者ノータイムで進む

控室の先生たちも『研究でしょうか?』と発言していることから、使用された戦型はかなりマイナーなもののようです。この点からも、渡辺先生の本気度が伝わってきます。

本局は49手目の「5三桂打」で王手がかかり、藤井玉が非常に危険な局面になりました。

藤井先生はこの局面で時間を使いますが、対応が難しかったようです。その数手後の局面では、AIが渡辺先生の勝率を70%と判定しています。

渡辺先生70%で大優勢

カメラがチーム関東Bの控室に切り替わると、AIが示す70%の形勢を見たメンバーが盛り上がりを見せました。

この時点で5分30秒の残り時間を持つ渡辺先生は初めて長考に入ります。7三に角や金を打ち込める局面で、彼はその先を読んでいたのでしょう。

しかし、渡辺先生の次の一手「5三歩」は誰もが予想外で、控室からは驚きの声が漏れました。終局後、渡辺先生はこの手が誤りだったと反省していました。

最終局面で、渡辺先生の形勢はついに96%と示され、これが二度目の大きなチャンスとなりました。

しかし、チーム関東Bの控室も攻め方が分からず、プロでも一目では気づきにくい手だったようです。渡辺先生も残り時間を使い考えますが、正解手を指せませんでした。

パブリックビューイングでは、この日最大の盛り上がりを見せました。しかし、渡辺先生の次の手が決まらない中、形勢は徐々に戻っていきます。

攻めのターンが藤井先生に移ると、渡辺先生が玉の逃げ場所を誤り、形勢は入れ替わり、藤井先生が優勢になりました。ここから藤井先生は間違いなく進め、渡辺先生は天井を見上げる反省のポーズを取ります。最後は藤井先生が的確に攻め、勝利を収めました。

最終局は大変素晴らしい将棋でした。渡辺先生には、早くタイトル戦に戻ってきてほしいですね。

4/27 恒例のABEMAトーナメント ドラフト会議

今年もタイトルホルダーの藤井先生を含むA級棋士11名によるドラフト会議が4月27日(土)に放送されます。エントリートーナメントを勝ち抜いた上位3名が新たな12チーム目のメンバーとして参加します。

ドラフト会議では、11名のレジェンド棋士が残り2名を選択します。同じ棋士が複数指名された場合は、抽選で決定します。

藤井先生は抽選を苦手としており、人気棋士を避ける傾向にありますが、今年はどの棋士を選んだのでしょうか。

『かおる』もチーム藤井のメンバー予想に挑戦しました。読者の皆様も応援するチームの予想をして、放送を楽しみにお待ちください。

チーム藤井棋士「かおる」が予想した根拠
ドラフト一巡目上野裕寿四段昨年、若手注目棋士についてインタビューを受けた際、実績十分の「藤本先生」と「上野先生」の名前を挙げていました。
藤本先生は複数のチームからの指名が予想されるため、「かおる」は上野先生の指名を予想します。
昨年12月の「新人王戦記念対局」で練習対局を行っていたことも、上野先生への指名があり得る理由です。
ドラフト二巡目宮嶋健太四段宮嶋先生とは10年以上の付き合いがあり、奨励会時代には対局後に関西将棋会館近くのラーメン屋に行ったり、コンビニでおでんを買ってきて棋士室で徹夜でリレー将棋を楽しんだ仲です。
他チームからの指名がないと予想されるため、彼を2巡目で指名することを予想します。