【大逆転負け 叡王戦第3局】藤井ファンも茫然自失! 藤井聡太叡王に何が起きた？

気を取り直して本局を振り返ってみたいと思います。

藤井叡王 初めてのカド番に

第9期叡王戦第3局が5月2日に愛知県名古屋市「名古屋東急ホテル」で行われました。

後手の伊藤匠七段(21)が藤井聡太叡王(21)に18時43分、146手で勝利し、2勝1敗としました。

次戦は5月31日（金）に千葉県柏市「柏の葉カンファレンスセンター」で開催されます。

戦型は「角換わり」に

4時間のチェスクロック方式で進められるため、手が素早く進んでいます。

藤井先生は先手番で「角換わり」を目指し、後手の伊藤先生もこれに応じています。伊藤先生が自信を持って「角換わり」に対応していることは間違いありません。

藤井先生の直近1年間の「角換わり」での先手番の成績を下記の表でご覧ください。

	藤井聡太叡王の対戦相手	先手番「角換わり」成績
2024.4.7	伊藤匠七段	〇
2024.3.3	伊藤匠七段	〇
2024.2.4	伊藤匠七段	〇
2024.1.14	増田康宏八段	〇
2023.11.19	糸谷哲郎八段	〇
2023.11.10	伊藤匠七段	〇
2023.10.17	伊藤匠七段	〇
2023.8.31	永瀬拓矢九段	●
2023.7.25	佐々木大地七段	〇
2023.7.3	佐々木大地七段	〇
2023.6.28	羽生善治九段	〇
2023.6.5	佐々木大地七段	〇
2023.5.10	中川大輔八段	〇

改めて見ると、驚異的な成績ですね。藤井先生は先手番「角換わり」で12勝1敗という記録を持っており、唯一の敗北は王座戦第1局で永瀬先生に敗れたときだけです。

伊藤先生は藤井先生とのタイトル戦で後手番のときは、必ず「角換わり」を受け、ここまで5戦5敗です。「角換わり」を避けない姿勢には、彼の強い意志が感じられます。

実際、この後藤井先生が優勢に進めましたので、伊藤先生の研究量をもってしても、藤井先生の先手番「角換わり」を打ち破るのは非常に困難であると言えます。

午前のおやつ

藤井聡太叡王の午前のおやつ	伊藤匠七段の午前のおやつ
コロコロしばちゃん スポンジとすっきりした口どけのキャラメルクリームで仕上げた、可愛い柴犬のカップケーキです。	金と銀 コクのある、なめらかな味わいのカスタードクリームと北海道産生クリーム入りシャンテリークリームのとろけるシュークリームです。
このチョイスは2度目かな？ 「かおる」も食べたい	「金と銀」という名前は、将棋の駒をイメージした？ 「かおる」も食べたい

午前の進行

後手の伊藤先生は、勝ちにくいと言われる「5二金」型に

先手の藤井先生も稀に「5二金」型を採用しますが、本局では伊藤先生が以前よく使っていた形を採用しました。

現在、「5二金」型は勝ちにくいとされ、避けられがちですが、これを選択したということは、藤井先生の研究が不十分だと見て伊藤先生が戦略的に挑んだ可能性があります。

先手、やや有利

これまでの進行はよくある形でしたが、伊藤先生は4筋の歩を取らずに6筋を突進し攻めを仕掛けました。この手は半年前の稲葉陽八段と渡辺明九段の対局と同じでした。

対する藤井先生は、4分の少考後に2筋から反撃を開始しました。

時間の使い方を見ると、両者ともに研究十分の形のようです。数手後、昼食休憩に入った時の局面では、AIはやや藤井先生が有利であると判断しています。

勝負メシ

藤井聡太叡王のランチ	伊藤匠七段のランチ
名古屋コーチン入りスパイシー焼きカレー	天むす(三貫)/稲庭うどん(冷)セット
藤井先生の好物『カレー』がきたよ。 「かおる」も食べたい	暑くなってきたので、冷たいのが欲しくなるね。 「かおる」も食べたい

見届け人制度

この叡王戦は「見届け人」という制度があります。見届け人の特典は大変豪華です。

• 特典１．前日検分に同席
• 特典２．対局開始時ならびに感想戦の際に同席
• 特典３．棋士・女流棋士による解説・指導【本局は糸谷哲郎八段と佐々木海法女流初段が担当しました】
• 特典４．近隣を棋士・女流棋士がご案内
• 特典５．昼食は対局者用メニューからチョイス/おやつもあり
• 特典６．直筆色紙・フォトブックをプレゼント/両対局者と解説棋士・女流棋士4名の揮毫色紙
• 特典７．両対局者の揮毫が入った記念扇子
• 特典８．2泊のホテル宿泊つき
• 特典９．対局後の夕食会/解説棋士・女流棋士と一緒に
• 特典10.対局で使用した駒をプレゼント

今回の見届け人は糸谷先生との2枚落ちの対局で快勝しました。飛車と角を抜いた状態でプロと対局しても簡単には勝てないため、今回の見届け人はかなりの実力者であると思われます。

伊藤先生の手が止まる

伊藤先生は、予期しない手が出ると手が止まります。これは視聴者にもわかりやすい現象です。

本局では、65手目の「2六香」が予想外の手だったようです。この時点でAIの形勢判断は藤井先生が57%と示されていたため、ファンは藤井先生が勝利に近づいていると考えていました。

伊藤先生はこの手に1時間19分の長考をしました。名人戦ではこの程度の長考は普通ですが、4時間制の将棋でこのような時間の使い方は驚きです。

伊藤先生は10代の時の藤井先生と同じように、考える場面では時間を惜しまず使うタイプです。この結果、持ち時間は以下の通りとなりました。

• 藤井先生1時間35分
• 伊藤先生1時間18分

ここまで、伊藤先生は飛ばしてきたため、両者の残り時間はほぼ同じとなりました。藤井先生は昔から、研究手順でも、少考の上、指す傾向があるため、藤井先生の方が時間を消費していました。

午後のおやつ

藤井聡太叡王の午後のおやつ	伊藤匠七段の午後のおやつ
生ミルキー(フルーツティー味) フルーツとアールグレイでフルーツティーをイメージした季節限定の生ミルキーです。	厳選あんみつ 国産天草を使用した寒天に、白玉、粒あん、旬の苺を彩りよく飾ってあります。
季節限定が気になります。 「かおる」も食べたい	新発売の商品です。伊藤先生、チェックされていたんですね。 「かおる」も食べたい

伊藤先生の読みが上回る

形勢は藤井先生が優勢であり、久々に藤井曲線が見られるかもしれません。しかし、残り時間が少ないことが気になりました。

悪夢の始まりでしす。伊藤先生の90手目に対し、藤井先生が残り時間13分をすべて使い切ります。これは明らかに異常です。

AIの形勢判断は76％で変わらないのに、藤井先生が長考しています。明らかに読み抜けがあった可能性が高いです。

局後のインタビューでは、伊藤先生が指した90手目の手で形勢を悪くしたと語っていましたので、藤井先生には珍しく、形勢判断に誤りがありました。

これは、時間がない中での、突然現れた予想外の手によって、動揺したためかもしれません。

伊藤先生は局後のインタビューで、この時点では負けを覚悟していたと発言しており、一番怪しい手を指したそうです。これが藤井先生の思考を狂わせる要因となりました。

その2手後、藤井先生は痛恨の悪手を指してしまいます。藤井先生のファンからは悲鳴が上がったことでしょう。

しかし、これは藤井先生の調子が悪いわけではないと思います。この複雑な局面を読み切った伊藤先生の読みの方が優れていたのでしょう。

「藤井先生の調子が悪い」という意見も聞こえてきますが、2024年は豊島先生との2局、伊藤先生との3局を含む計5局を戦っています。これは、単に対戦相手のレベルが高いからではないでしょうか。

豊島先生との対局は、昔から終盤に二転三転する将棋が多いです。

一方、伊藤先生はレーティングで2位の実力を持つ棋士で、まだ4年目です。藤井先生の存在が際立っているため忘れがちですが、この年齢で既に3回もタイトル戦に出場していること自体が異例です。

昨年の春は、名人戦で渡辺先生と、叡王戦では菅井先生と対戦していました。

渡辺先生に対しては相性が良く、勝率は約8割です。一方、菅井先生に対しては、藤井先生の対振り飛車戦法が非常に優れているため、一方的な勝利が多かったのかもしれません。

本局に戻り、その後、両者は1分将棋に入りましたが、伊藤先生は大きなミスなく指し続け、連勝となりました。藤井先生のファンは悪夢を見ているようでした。

第4局が非常に楽しみに

伊藤先生がついに藤井先生を追い詰めました。これは初めてのことです。

過去の非公式戦では、3番勝負で初戦敗退後に2連勝して優勝したことが2度ありますが、タイトル戦においても、ついに緊張感あふれる瞬間が訪れました。

結末はどうなるのでしょうか。

伊藤先生がタイトルを奪取する可能性もありますが、「かおる」は藤井先生の3勝2敗と予想します。

藤井先生はこれまで、勝利が絶対に必要な局面での勝率が100％に近く、記録更新がかかる対局では常に勝利してきました。そのため、今回も藤井先生の防衛を予想しますが・・・。

しかし、伊藤先生がさらにレベルアップした場合は、彼をライバルと認めざるを得ないでしょう。5月31日が楽しみです。