佐々木勇気八段 一般棋戦初優勝
第73回NHK杯将棋トーナメント決勝が3月17日に放送され、先手の佐々木勇気八段(29)が藤井聡太NHK杯選手権者(21)を169手で破り、初優勝を飾りました。
佐々木先生は、全棋士参加棋戦(朝日杯・銀河戦・NHK杯・日本シリーズ)において、今回が初めての優勝となりました。おめでとうございます!
また藤井先生には6年ぶりの勝利となりました。
かおる
連勝を29で止めた対局は
もう6年も前なんだね
佐々木先生は最先端の将棋にも精通していますが、昨年は研究将棋を避け、力戦で挑みました。しかし、結果は完敗でした。
かおる
「力戦」ってよく聞くけど
どういう意味?
かおり
知識や経験よりも
読みの力で勝負することを「力戦」と言います
今年の佐々木先生は、逃げずに研究将棋で挑むことを決意していたようです。
このNHK杯の収録日は、朝日杯将棋オープン戦の決勝から2日後の2月12日でした。
朝日杯で永瀬先生は「矢倉」戦法を選択しましたが、佐々木先生も同じ戦型を考えていたそうです。
しかし、永瀬先生が先に矢倉を採用したため、この対局では角換わりの中でも、より古い戦法を選択しました。
この戦法は、本日解説の羽生善治九段と藤井先生が対戦した時以来のもので、それは2年前の棋王戦コナミグループ杯挑戦者決定トーナメントの敗者復活戦で採用されました。
2年前の戦法であるため、藤井先生は対応に時間を要します。
棋士はしばしば天才と言われますが、2年前の具体的な対局内容を完璧に記憶している先生はほとんどいないでしょう。
かおる
永瀬先生なら覚えているかもしれない!
永瀬先生の記憶力は棋士の中でも群を抜いているようだよ
90手先まで準備をしていた佐々木先生は、ほとんど時間を使わずに指し進め、時間と形勢の両方で優位に立ちました。
しかし、藤井先生は劣勢の中でも必死にチャンスを探し続けます。
そして101手目、研究から外れた局面で藤井先生にチャンスが訪れ、見逃さず攻め立てました。
形勢は一時的に98%まで藤井先生が有利になり、ファンも勝利を確信し始めます。
しかし、想定外の一手が佐々木先生から指されます。解説の羽生先生も驚かれていました。
藤井先生もその手を読んでいなかったようです。これが決め手となりました。
藤井先生は、その後、自身に叱咤する様子や失望の表情が度々映し出されました。
それでも、今年度の藤井先生は優勝1回、準優勝3回という驚異的な成績を収めています。これは、すべての棋戦で決勝に進出したことを意味します。
本局は非常に興奮する内容でした。面白い将棋を見せて頂いたことにに感謝しています。
きっと近い将来、再びこの2人の対局がタイトル戦で見られることでしょう。次回は藤井先生が勝利を収めることを期待しています。
なお、この対局での敗北により、藤井先生は久しぶりの連敗となったようです。タイトルホルダーになってから初めてのことではないでしょうか。
注目の局面
後手が怖い局面
これはアマチュアの対局でもよく見られる局面です。
本局では別の手を準備していましたが、4三に角を打つという手が選択肢の一つとして考えられるでしょうか。
2筋での攻防に注目してみましょう。
先手は銀と飛車の2枚で攻めていますが、後手は金一枚でこれを受けています。
ここで、4三に角を打つ手を選べば、後手の金を外し、後手に受ける手段を失わせることができます。
そのため、最善手は恐らく△4一に角を打つことでしょう。
しかし、「かおる」レベルでは、持ち駒の飛車や角は相手陣地に打つことしか考えないため、守りが甘くなりがちで、その結果、敗れることも少なくありません。
藤井先生 逆転の一手
佐々木先生が序盤から有利に進めています。ところが、この局面で、佐々木先生から痛恨のミスが出ました。
藤井先生はこのチャンスを逃がしません。△9八桂成という、桂馬のタダ捨てです。
このような手を即座に思いつく能力が、藤井先生の素晴らしさを物語っています。
もし優勝していれば、この一手が勝利に直結する決定的な一手となっていたでしょう。
しかし、残念ながら、最終的には力尽き、準優勝で幕を閉じました。
年間最高勝率更新を逃す
過去ベスト10 【2023年は3/17暫定順位】 | ||||
1位 | 1967年 | 中原誠十六世名人 | 47勝8敗 | 8割5分4厘 |
2位 | 2023年 | 藤井聡太竜王名人 | 46勝8敗 | 8割5分2厘 |
3位 | 2011年 | 中村大地八段 | 40勝7敗 | 8割5分1厘 |
4位 | 2018年 | 藤井聡太竜王名人 | 45勝8敗 | 8割4分9厘 |
5位 | 2020年 | 藤井聡太竜王名人 | 44勝8敗 | 8割4分6厘 |
6位 | 2023年 | 藤本渚五段 | 47勝9敗 | 8割3分9厘 |
7位 | 1995年 | 羽生善治九段 | 46勝9敗 | 8割3分6厘 |
8位 | 2001年 | 木村一基九段 | 61勝12敗 | 8割3分5厘 |
8位 | 2017年 | 藤井聡太竜王名人 | 61勝12敗 | 8割3分5厘 |
10位 | 2022年 | 藤井聡太竜王名人 | 53勝11敗 | 8割2分8厘 |
今年度、藤井先生は2位でフィニッシュしました。あと1勝が遠かったです。
それでも、十分に素晴らしい成績を収めています。記録更新の望みは、来年以降に期待しましょう。