12月3日に放送された第32期銀河戦決勝トーナメント2回戦第1局で、

後手の藤井聡太竜王名人(22)が広瀬章人九段(37)を160手で破り、昨年に続いてベスト4進出を果たしました。

藤井竜王名人は終盤で広瀬九段の攻めを冷静にしのぎ、緻密な指し回しで勝利を収めました。

この結果により、タイトル保持者としての貫禄を示すと同時に、今期の優勝に向けて大きな一歩を踏み出しました。

昨年の大会でもベスト4に進出している藤井竜王名人。

果たして今年は頂点に立つことができるのか、今後の戦いにも注目が集まります。

トーナメント表R6.12.3

角換わり腰掛け銀から右玉に

先手番の広瀬九段は角換わりを選択、

後手の藤井竜王名人は、最近の角換わりのトレンドである右玉を採用しました。

藤井竜王名人 右玉採用

アマチュア間ではよく指される戦法ですが、

今年に入ってからはタイトル戦でも頻繁に目にするようになりました。

本局では、広瀬九段が穴熊に構えたあと、

藤井竜王名人はひたすら手待ちを続け、チャンスをじっと伺っていました。

そして、ついにその瞬間が訪れます。

藤井竜王名人は「待ってました」とばかりに5五銀と前に出て、一気に攻勢に転じました。

この一手から、対局の流れが大きく動き出します。

64手目攻める藤井竜王名人

この手には、4六の歩を取る狙いと、6五歩からの攻めを展開する二つの狙いが含まれていました。

広瀬九段は4六の歩を守るために4七金と上がりましたが、

藤井竜王名人は間髪を入れずに6五歩と仕掛けて攻勢に出ました。

藤井竜王名人は馬を作り、一見すると有利に見える局面を築きました。

しかし、そこから広瀬九段の怒涛の攻めが始まります。

その攻めは実に50手以上にも及び、視聴者も手に汗握る展開となりました。

それでも、そこはさすが藤井竜王名人。

堅実な守備で攻撃をすべて受けきり、ついに自らの攻撃のターンを迎えました。

かおる

もしかおるだったら、きっと何度もミスをしていたでしょう。

それほど見事な攻めでした!

ここまで来ると、勝負はすぐ決着するかと思われましたが、

広瀬九段は最後まで必死の抵抗を見せます。

終盤までどちらが勝つか分からないハラハラする展開が続きましたが、

最終的に160手目で藤井竜王名人が広瀬玉を仕留めることに成功しました。

160手投了図

上図は投了図面です。

  • 6五に逃げた場合:△6六飛車打ちから▲5四玉と逃げますが、△8七馬とすると詰みになります。
  • よって、先手は▲7七銀打ちとするくらいですが、△6七飛車打ちから、▲7六玉と逃げますが、△7七馬に対して同銀、同桂馬としても△6五銀で詰みとなります。

3年連続決勝進出を狙う

次戦では、佐々木勇気八段と梶浦七段の勝者と対局します。

佐々木八段とは、現在進行中の竜王戦7番勝負で対戦しており、こちらは12月中に決着する予定です。

一方、梶浦七段とは、藤井竜王名人がまだ中学生だった頃に対局して以来の再戦となります。

この初対局では、藤井竜王名人が梶浦七段の背後に回り込んで盤面を見る「ひふみんアイ」を披露し、

先輩棋士から注意を受けたエピソードが話題になりました。

当時は新米棋士だったこともあり、微笑ましいエピソードとして語り継がれています。

この出来事も、もう7年前のことになるのですね。