本日10月12日(日)、愛知県名古屋市のポートメッセなごやにて、将棋ファン注目の特別対局が実現しました。

藤井聡太竜王・名人羽生善治九段という、まさに新旧のトップスターによる対局は、

熱戦の末、92手で後手の藤井竜王・名人が勝利を収めました。

もともとは「将棋日本シリーズ JTプロ公式戦」の準決勝として、藤井竜王・名人と渡辺明九段の対局が予定されていましたが、

渡辺九段の休場に伴い、今回の豪華な特別対局が組まれることとなりました。

会場は大いに盛り上がりました!

羽生マジック炸裂

後手番の藤井竜王・名人がリードを広げ、AIの評価値は一時85%と、このまま押し切るかと思われました。

しかし、63手目、まさに『羽生マジック』が炸裂します。

角に取られそうだった自陣の龍を、なんと△3二龍と盤上に切り捨てたのです。

持ち時間の少ない本対局で、藤井竜王・名人はこのまさかの強手に一瞬固まったことでしょう。

予想外の展開に、応手は大変悩ましく、熟考の末に同歩と応じました。

本当は△3二同金と取りたいところですが、その後の▲2三歩成が厳しく、指しづらかったと見られます。

この羽生九段の会心の一手により、形勢は完全に互角に戻ったのです。

羽生マジック

角のタダ捨て

早指しらしい、最後まで一進一退の攻防が続きましたが、最終盤、わずかにリードを奪った藤井竜王・名人が、決定的な一手を見せます。

82手目、△6八角。

一見、タダのところに角を打ったように見えるこの手が、羽生玉に対する厳しい決め手でした。

角を取ると△6七歩から一気に詰んでしまうため、羽生九段は逃げざるを得ません。

角捨て

攻めから逃げる苦しい展開となった羽生九段は、続く△5八銀の王手も、自玉の安全を図るために逃げ続けます。

さらに△4七銀と王手龍取りをかけ、攻めを継続したことで、後手玉の安全は確定しました。

羽生九段は、91手目▲4一銀成とし、藤井竜王・名人の飛車を取りましたが、△同玉と手厚く取られては万事休す。

後手玉の逃げ道が広がり、これ以上の抵抗は難しいと判断し、羽生九段が投了しました。

公式戦ではありませんが、本番さながらのスリリングな終盤戦を見せてくれた両雄に、心から感謝の意を表したいと思います。

下図は投了図です。

投了図