12月28日 大島女流 序盤 有利に進める

2023年12月28日に行われた第17期マイナビ女子オープン本戦において、福間香奈女流五冠と大島綾華女流二段の対局を振り返ります。

先手を取った大島先生の初手は2六歩でした。これは藤井聡太先生と同じですね。

初手2六歩

後手の福間先生の初手は、3四歩でした。彼女はゴキゲン中飛車を得意としています。

後手3四歩

この戦法の名前は、戦法を開発した近藤正和先生が常に笑顔でいることから「ゴキゲン中飛車」と名付けられました。

この戦法は、角道を開けて積極的に戦う特徴を持っています。

超速▲3七銀戦法

ゴキゲン中飛車に対する有力な対策の一つとして『超速▲3七銀戦法』が挙げられます。

この戦法は、奨励会時代の星野良生五段によって考案され、藤井先生もしばしば採用しています。

超速▲3七銀戦法

後手の福間先生がゴキゲン中飛車を採用する中、先手の大島先生は3六歩から3七銀へと駒組を進め、その後4六銀と前進しました。

後手の福間先生は、5五の歩を守るために4四銀へと進出します。この展開を銀対抗と呼びます。

次に、先手の大島先生は5五の歩を取る目的で、2枚目の銀を進出させます。

かおる

藤井先生もよく指しているね

2枚銀

プロ棋士はこの進行を自然に進めますが、アマチュアの場合、この段階でのミスが時折発生し、形勢に差がつくことも多いです。

かおる

何となくで指すのはダメだね

かおる

将棋ウォーズでは、中飛車を採用する人が少なく

対策が不十分な「かおる」です

今日、この戦型を頑張って覚えるよ!

次に、後手の3三の角の位置をずらすために、先手は3七に桂馬を跳ねていきます。

3七桂馬

後手は2筋の飛車に対応するために金を3二に上げます

しかし、この金が後手の玉から離れることにより守備力が低下することが、この戦法のデメリットとなります。

先手からの仕掛け

後手は6三に銀を進める瞬間を警戒しています。逆に先手はその一手を待ち望んでいます。

かおる

銀と金の連結が離れる瞬間に攻撃を仕掛けるんだね

本局では、38手目に6三銀と指した直後、大島先生が3筋の歩を突き出して攻めを開始しました。

先手3五歩と仕掛ける

この後、先手は4五桂と跳ねて角の位置を変えようとしますが、後手は角を1一に退避させました。

これは通常見られない角の配置で、「かおる」レベルのプレイヤーではほとんど目にすることがありません。

確かに、この位置に角を引けば、5五の歩が取られる心配もありません

続いて、先手は2筋の歩を交換しようとします。これに対して「かおる」ならば、安易に2三歩と受けてしまいますが、これは悪手のようです。

2四飛車

しかし、プロ棋士は当然に2三歩とは受けません。なぜなら、2一の桂馬には飛車の紐がついているからです。

さらに言えば、2三歩と受けると、▲3四飛とされて局面を制され、厳しい状況に陥る可能性があります。

後手3四飛車とまわり、先手優勢

この時点で、3二の金が狙われているため、金を4二に逃がすか、3三桂と跳ねる選択があります。

4二に金を逃がした場合、再び2筋からの攻撃に晒されて先手有利となります。

一方、桂馬を跳ねた場合は、角の利きが停止するため、5五の歩を取られ、結果として先手有利になります。

桂馬交換後、先手有利な展開に

本局では2三に歩を打たず、3三桂と跳ね出し、桂馬交換の後に飛車を2九に引きました。

ここまでの進行は先手の大島先生にとって完璧な展開で、形勢は約58%となっています。

しかし、福間先生は経験豊富で、巧みに粘り強く対抗します。その結果、一時的に形勢は福間先生に傾き、さらに中盤は幾度も情勢が変わりました。

大島先生の受けの強さが光る

実際の局面は以下の図の通りには進まなかったものの、「かおる」レベルのプレイヤーならば、8四に桂馬を打たれると、頭を抱えてしまいます。

後手8四桂で先手大優勢

8四に打たれた桂馬が、7六に跳ばれると、金と角のどちらかは取られてしまいますが、8六歩と突き出され、2枚替えとなると、先手が大優勢のようです。

従って、福間先生は上記の手を避け、別の手を選択しました。

その後、下図の局面では、後手が7四銀と出て、8三香成または6三香成という狙いがある、非常に危険な局面になりました。

このとき大島先生はどのように対応したかというと、

後手6五香打

7七に金を打ったではありませんか

7七金打

かおる

7七金は滅多に出てこないよね

かおる

もし桂馬があれば、7九に打って守れるけどなあ

この受けに苦しんだ福間先生が、攻撃の方針を変更したのでしょうか。

形勢は急速に大島先生の優勢へと変わりました。

終盤も強い大島先生

以下の図は105手目、6二に桂馬を成った局面ですが、福間先生には受けがないため、9四歩と下駄を預けました

かおる

「下駄を預ける」ってどういうこと?

かおり

「首を差し出す」という意味です

先手6ニ桂成

この次の手「腹銀」もよく出てきます。

先手7ニ銀成らず

かおる

玉の進める場所がほとんどなくなってしまったよ

かおる

すぐ王手をしたくなるけど、我慢をするんだね

この後、大島先生は正確な攻めを展開し、最後はしっかりと詰みを読み切り勝ちを収めました。

局面は、先手の9六香車で投了となりました。

先手9六香車で投了

香車はタダなので、後手は8銀で取るのですが。

後手同銀から9手詰

かおる

ここから9手詰だよ

かおる

答えは一番下にあるから確認してね

総評

現在、序盤はAIを用いた徹底した研究が行われており、福間先生や大島先生のように終盤力も強い先生同士の対局では、中盤の形勢判断が重要なポイントになっていると考えられます。

藤井先生が中学生から高校1年生の頃、「正確な形勢判断がまだ出来ない」とよく言っていたことを「かおる」は思い出しました。

答え:▲9四歩打△同玉▲9五歩打△同玉▲8六金△9四玉▲9五歩打△9三玉▲8三金打まで