第46回将棋日本シリーズJTプロ公式戦決勝が11月23日(日)

東京都江東区の「東京ビッグサイト」にて行われ、

後手の藤井聡太竜王名人(23)が永瀬拓矢九段(33)に114手で勝利し、2年ぶり3度目の優勝を決めました。

トーメント表 JT杯決勝

現在の将棋界を彩る「宿命のライバル」対決

本日、私たちが目撃したのは、現在の将棋界を牽引する藤井聡太竜王名人永瀬拓矢九段による、今期12度目となる対局です。

同一年度内で、トップ棋士同士がこれほど多く盤を挟むのは極めて異例。

それはまさに、二人が現在進行形で将棋界の最前線を形作っている何よりの証拠でしょう。

藤井聡太竜王名人永瀬拓矢九段
11/23 将棋日本シリーズ決勝勝利
9/9  王位戦第6局勝利
8/26 王位戦第5局勝利
8/19 王位戦第4局勝利
7/29 王位戦第3局勝利
7/15 王位戦第2局勝利
7/5 王位戦第1局勝利
5/29 名人戦第5局勝利
5/17 名人戦第4局勝利
5/9 名人戦第3局勝利
4/29 名人戦第2局勝利
4/9 名人戦第1局勝利

👑 令和の将棋界を牽引する二人

両者の対局が常に注目されるのは、その熱量と、互いの持ち味を出し尽くすような激しい展開にあります。

  • 藤井竜王名人正確無比な終盤術、そして誰も予想しえない独創的な着想。
  • 対する永瀬九段は、その異名通り「軍曹」のような徹底した研究量と、どんな苦境も粘り強く受け止める鉄壁の受けが光ります。

今回の対局も、お互いの手の内を知り尽くした者同士だからこそ生まれる、一瞬の隙も許さない濃密な時間となりました。

⚔️ 年明けの「王将戦」激突を前に

そして、この熱い2人の対決はまだ終わりません。

年明けには、両者は王将戦七番勝負で再び激突することがすでに決定しています。

今回の対局は、そのタイトル戦を前にした重要な「前哨戦」の意味合いも持ちました。

今回の対局で得られた互いの感触、そして次なる一手へのヒントが、来年幕を開ける王将戦の行方を大きく左右することでしょう。

私たちは今、現代将棋界の歴史が作られる瞬間に立ち会っています。

この宿命的なライバル関係が、今後どのように進化していくのか。

王将戦を含め、今後の二人の熱い「激突」から、一瞬たりとも目を離すことができそうにありません。

局面の核心!藤井六冠が長考に沈んだ「45手目 ▲3三歩成」の攻防

大一番は、45手目で一気に核心へ突入しました。

永瀬拓矢九段が、自陣の駒の働きを最大限に引き出す▲3三歩成と踏み込んだのです。

この一手が、この後の形勢を大きく左右する、まさに勝負手となりました。

こで後手の藤井聡太竜王名人が取れる対応は、主に三つ。この局面に、解説の森内俊之九段も鋭い分析を加えていました。

▲3三歩成と攻める永瀬拓矢九段

🚨 局面を複雑にする三つの選択肢

同金(△3三同金):悪手

森内九段は即座に、この手は悪手であると断じました。

「△3三同金と取ってしまうと、▲2ニ歩が打たれて桂馬が取られ、局面は一気に先手優勢になりそうです。」

同角(△3三同角):最も自然だが…

次に考えられるのは、△3三同角と取る手です。しかし、永瀬九段の読みはさらにその先まで深く進んでいました。

「△3三同角に対し、▲3四銀△4四角▲4八飛車と進み、△4三歩▲4四飛車△同歩となった局面で、永瀬九段が▲7一角と打つと、飛車が逃げても2ニの金と5四の銀の両取りとなってしまいます。」

プロが一瞬にして読み進める恐るべき手順です。我々ファンには想像もつかない、深く緻密な構想が詰まっており、後手玉はたちまち窮地に追い込まれます。

同桂馬(△3三同桂馬):苦渋の決断

そして、実戦で藤井竜王名人が選択したのは、△3三同桂馬でした。

ここまで、ほとんどノータイムで盤面を進めてきた藤井竜王名人の手が、この▲3三歩成を前にピタッと止まりました

超早指し棋戦としては異例の数分間を消費。

これは、藤井竜王名人がこの局面の恐ろしさを誰よりも深く理解し、その後の最善手を懸命に探っていた証拠でしょう。

最終的に消去法で△3三同桂馬を選択したと見られますが、

桂馬はいずれ取られてしまう運命であり、後手玉の形は依然として非常に怖い、ギリギリの戦いが続くことになりました。

この数分間の長考こそが、この一戦の緊迫度を物語っています。

永瀬九段の仕掛けと、それに対する藤井竜王名人のギリギリの対応。

トッププロの激しい攻防を目の当たりにできた、素晴らしい瞬間でした。

同桂馬

永瀬九段の勝負手

中盤の山場は、永瀬拓矢九段の巧みな仕掛けによって訪れました。

55手目、永瀬九段は手持ちの最後の一歩を投入し、▲4四歩と後手の銀を突り上げます。

⚡️ 永瀬九段の猛攻とAIの形勢判断

藤井聡太竜王名人はこれに対し、△4四同銀と応じますが、永瀬九段はすかさず▲4三金と打ち込みます。

4四の銀をタダで取られるわけにはいかない藤井竜王名人は△5三銀と引く一手を余儀なくされました。

この局面、盤面だけを見ると、永瀬九段の攻めが継続し、後手陣に圧力がかかっているようにも見えます。

解説を聞いている我々の目には、先手ペースで進んでいるように映ったはずです。

しかし、驚くべきことに、AIの示す形勢判断は「藤井竜王名人が68%」と、明確に後手優勢を示していました。

▲4三金打つ

🤯 「角をくれてやる」藤井竜王名人の深い読み

なぜ、攻められているように見える藤井竜王名人が優勢なのか?

それは、永瀬九段が手に入れた「角」だけでは、藤井竜王名人の強固な玉を攻め切るには至らない、という深い読みがあったからです。

藤井竜王名人は、この攻防において、先に手に入れた駒と自陣の堅さを比較し、

「駒損をしても優位を保てる」と読み切っていたのです。

その後、藤井竜王名人は一気にギアを上げ、異次元の攻めを続けます。

永瀬九段の攻めを受け止めながら、自玉の安全を確保した藤井竜王名人は、見事な手順で先手玉を追い詰めました。

結果、そのままの勢いで押し切り、藤井八冠は2年ぶり3回目の優勝を飾りました。

この一戦は、藤井竜王名人底知れない読みの深さを証明する、記憶に残る名局となりました。