羽生九段 右四間飛車を採用

第73回NHK杯将棋トーナメント準決勝の第2局が3月10日に放送され、後手の藤井聡太NHK杯選手権者(21)が羽生善治名誉NHK杯(53)を92手で破り、決勝に駒を進めました。

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後手雁木に対し、羽生九段 右四間飛車を採用

2連覇を目指す藤井先生と、12回目の優勝を狙う羽生先生の、夢の対局が準決勝で実現し、その興奮は何度見返しても色褪せないものです。

藤井先生・羽生先生も、昨年の王将戦以来となる、この対局を、楽しみにしていたに違いありません。対局後の感想戦は、二人とも楽しそうでした。

本局では、羽生先生が飛車先の歩を2六に留めたため、藤井先生は角交換を避け、雁木戦法を選択しました。

藤井先生は、2年前の竜王戦第1局で広瀬章人九段と対戦し、後手で角換わりを選択し完敗したことで、現在は▲2六歩型では角換わりを採用していません。

この布陣は藤井先生が得意とするもので、羽生先生が意図的に誘導した可能性が高いです。

その後、羽生先生は飛車を4筋に移動させ、戦いに備えて態勢を整えました。

かおる

将棋ウォーズではよく相手に

右四間飛車を指されるよ!

右四間飛車は居飛車戦法の一つで、飛車を4筋に配置し、飛車・角・銀・桂の組み合わせで積極的に攻撃を仕掛ける強力な戦法です。

将棋ウォーズにおいて1級から二段レベルの間では、右四間飛車が頻繁に採用されています。

これは、右四間飛車に対する適切な対応を十分に習得していないプレイヤーが多いため、この戦法を用いることで勝利を得やすくなる点にあると考えられます。

かおる

「かおる」もその一人だよ

かおり

わかっているなら、勉強してください

かおる

はい

右四間飛車図面(藤井聡太NHK杯)

本局では、羽生先生が右四間飛車を採用したため、通常この戦法を用いるプレイヤーにとっては非常に勉強になる一局でした。

これまでの2人の対局

羽生先生は藤井先生に対し、様々な戦型を仕掛けています。

オールラウンダーである羽生先生の多彩な戦術に、藤井先生は毎回しっかりと対応している印象を受けます。

今年度、羽生先生は会長職を務めるなど多忙を極めており、研究時間が限られているにもかかわらず、魅力的な将棋を披露してくれていることに感謝しています。

羽生義治・藤井聡太対局成績

一手一手が難しい将棋に

本局は早い段階から下図の▲1六歩から一手一手、難しい将棋になり、時間を使う展開になりました。

藤井先生は時計を頻繁に確認しながらも、集中して対局に臨む姿が印象的でした。

先手1六歩から研究外れる

羽生義治先生にチャンスが!

開戦(かいせん)してから難解な形勢が続き、慎重な指し手が続いていましたが、藤井先生から5五歩という過激な手が指されます。

かおる

ところで、開戦って何?

かおり

戦いを起こすための最初の攻めのことです

かおり

『開戦は歩の突き捨てから』という格言があります

かおる

聞いたことがあるよ

かおり

歩を突いて相手に取らせることで、銀などの攻めを前に進めやすくなるという意味です

後手から5五歩を指された以上、羽生先生も黙ってはいられません。このままでは銀がとられますし、銀を逃げると金が出来てしまいます。

後手5五歩
後手4七歩成

従って、羽生先生は銀を逃げず、桂馬を跳ねだしていきました。

先手4五桂

そこから数手進み、藤井先生のと金ができ、羽生先生が飛車を逃がしたところです。

先手3六飛車

この局面では、羽生先生側に飛車を逃げずに藤井先生の玉を攻める手段があったようです。

かおる

藤井先生は、飛車を簡単に捨てすぎだよね!

かおる

詰将棋は大駒(飛車・角)をよく捨てるから

藤井先生の頭の中は『捨てたら、どうなるのかな』と、常に考えていそうだね

感想戦で藤井先生がこの点を指摘したとき、羽生先生が何度もうなずいていた様子が印象的でした。

ここで、出ました! 藤井先生、お得意の大胆な角切りです。

後手5九角成(藤井聡太NHK杯)

かおる

ふつうは切らないよね

でも、ここ一番躊躇なく、踏み込むところが、藤井先生らしい

さらに数手進み、後手の藤井先生から手裏剣の歩(しゅりけんのふ)がとんできました!

後手8七歩打(藤井聡太NHK杯)

かおる

手裏剣の歩って何?

かおり

相手の駒が三~五段目にある筋で

ニ~四段目に打つ歩のことです

この対応が難しかったようです。羽生先生は積極的に2一に角を打ちましたが、飛車が走ったとき、一度羽生先生の玉が詰めろになっていました。

後手8六飛車が一度詰めろとなる(藤井聡太NHK杯)

かおる

2一角打で、「かおる」なら

取られそうなにしか目がいかないよ

かおる

解説の佐藤天彦先生が、『羽生先生の玉が詰めろです』と言うので

かおる

詰みを考えているうちに、先へ先へと進んでしまい、

「かおる」は置いてきぼりに。

かおり

7手詰です

かおる

初手を教えてください。

かおり

初手は8八金打です

かおり

角で3ニ金を取ったらどうなるか

見てみましょう!

後手8八金打(藤井聡太NHK杯)

かおる

わかってきたよ!

後手7八金よる(藤井聡太NHK杯)
後手8八歩成(藤井聡太NHK杯)
後手7八金打で詰み(藤井聡太NHK杯)

そこで、羽生先生は9七銀打とし、耐えようとします! 羽生先生はこれで大丈夫と思ったようです

先手9七銀打(藤井聡太NHK杯)

かおる

飛車にあたっているから、どうしたらいいのかなあ

こういう手で、いつも負けている気がするよ

かおる

え~ 飛車を逃げないの?

また出ました! 藤井先生のお得意の手です。飛車まで見捨ててしまいます。

藤井先生は完全に読み切っていました。あの短時間で読み切れるのは藤井先生くらいでしょう。

後手5七歩成(藤井聡太NHK杯)

藤井先生は飛車を見捨てて、5七にと金を作ります。これで決まっているようです。

羽生九段 最後の反撃

これで羽生先生には、詰ます以外に選択肢がなくなったため、猛攻を仕掛けていきました。

プロ棋士はこの段階から、さまざまな手法で攻め込んできます。

一般の人なら何度も詰まされて敗れるところですが、藤井先生はAIに倣い、冷静に対応していきます。

ついに策が尽きてしまいました。93手目、羽生先生が投了されました。お疲れ様です。

決勝は2年連続 同一カード

決勝は3月17日(日)に放送されます。二連覇を目指す藤井先生は佐々木勇気八段(29)と対戦をします。

第73回NHK杯戦 決勝(藤井聡太NHK杯)

藤井先生は、今年度の一般棋戦で1回優勝(将棋日本シリーズ)し、2回準優勝(朝日杯将棋オープン戦・銀河戦)するなど、非常に優れた成績を収めています。

ファンとしては、もう一つ、藤井先生の優勝を目の当たりにしたいものです。来週を楽しみに待ちましょう。