黒藤井、いきなり発動!
3月30日(土)19時からABEMAで放送されたABEMA地域対抗戦で、いきなり面白い出来事がありました。黒藤井が早速の登場です。
司会の竹部さゆり女流から藤井先生へ、「杉本昌隆師匠と同じチームで戦うのはABEMA師弟トーナメント以来ですね」という質問に対し、藤井先生から予想外の回答がありました。
藤井先生は「今回は、師匠が選手としては出場しない方針だと思いますので、私としては安心しています」(笑)と述べました。
竹部先生が「安心?」と問い返すと、藤井先生は「失礼しました(笑)」と答えました。
藤井先生の冗談に、チームメンバーは、どう反応していいか戸惑ったかもしれません。
一方で、「出るかもしれません」と苦笑いする杉本先生に対して、何ともうれしそうな藤井先生の様子が、二人の良好な関係を物語っています。
本戦準決勝第一試合 主な対局結果
準決勝の第一試合で、チーム中部はチーム関東Aに5勝1敗で勝利し、決勝進出を果たしました。
前回の記事で予想したように、チーム関東Aが全メンバー参加の方針を取ったため、好調を維持している羽生善治九段が1回しか出場できず、試合は一方的な展開となりました。
もしチーム中部も師匠を除く4人が全員で対局に臨んでいたなら、結果は大きく違っていたかもしれません。
決勝進出を決めたメンバーの成績は以下の通りです。
- 藤井先生 11勝1敗
- 豊島先生 4勝2敗
- 八代先生 0勝1敗
- 服部先生 0勝2敗
- 杉本先生 0勝0敗
藤井先生の人気と強さを考慮すると、作戦の立て方が大変難しいのかもしれませんね。
詳細な結果は以下の表の通りです。
本戦準決勝第一試合 | 第1局 | 〇 | 先手 豊島将之 | 後手 近藤誠也 | ● |
第2局 | 〇 | 後手 豊島将之 | 先手 木村一基 | ● | |
第3局 | 〇 | 先手 豊島将之 | 後手 石井健太郎 | ● | |
第4局 | ● | 後手 豊島将之 | 先手 佐々木勇気 | 〇 | |
第5局 | 〇 | 先手 藤井聡太 | 後手 佐々木勇気 | ● | |
第6局 | 〇 | 後手 藤井聡太 | 先手 羽生義治 | ● |
第1局 豊島将之九段と近藤誠也七段
チーム中部のトップバッターは豊島先生でした。チーム中部はこれまで2回とも初戦を落としているため、今回の勝利はファンにとっても特別なものです。
控室で笑顔を見せる藤井先生のコメントも、ファンならずとも楽しみにしているところでしょう。
対局では「相掛かり」の戦型が採用され、豊島先生は昔ながらの「4六銀」を指しました。
序盤から優位に立った豊島先生が最終的に勝利を収めます。
下図は、近藤先生の玉に詰みがある状況で、控室の藤井先生が一瞬で詰み筋を披露します。
終盤に強い豊島先生も期待通りの手を指し、見事に勝利を収めました。
かおる
藤井先生が指摘した「4二飛車」を指す、豊島先生。
流石です。7秒しかなかったんですよ。
チーム中部としては初戦をものにしたことで、多くのファンが服部先生の出番はないな、と思ったに違いありません。
第2局 豊島将之九段と木村一基九段
過去、王位戦でフルセットの激戦を繰り広げた両者ですが、その時は木村先生が勝利し、悲願の初タイトルを手にしました。
フィッシャーも得意とする木村先生に苦戦が予想されていた豊島先生ですが、今回の対局では事前の予想とは異なる展開が見られます。
中盤まで両者は互角に進行しましたが、木村先生が6七金を指した際、控室で観戦していた藤井先生は「ここで仕掛けたいですね」とつぶやきました。
このとき形勢は50%から54%へと変動します。この僅かな差も見逃さない藤井先生の洞察力は、他の棋士とは一線を画すものがあります。54%の局面が下図です。
かおる
当然、「かおる」には違いがわからないけど。
藤井先生は形勢が54%になった瞬間を見逃しません。
豊島先生は局面を察知し、5五歩から仕掛けていき、主導権を握りました。
その数手後の下図の局面(先手の角が捕獲されました)では、藤井先生が「結構、いけてますね」と評しましたが、杉本先生は自信なさげに「本当にいけてるかなぁ」と応じます。この時点での形勢は後手が69%と出ていました。
しかし終盤に、ドラマが待っていました。詰み筋が複雑であったため、豊島先生が手を誤り、一時的に形勢が98%から2%へと大きく変わりました。この時の局面が下図です。
この局面では、玉の逃げ道が6通りありますが、玉を下に移動させると詰まされやすくなるため、実質的に選択肢は3通りに絞られます。
その中で正解は4六に玉を移動させること。この手によって玉は捕まらず、結果として木村先生の勝利となるはずでした。
上図は、同じく上部脱出する手(6六玉)ですが、玉を6六に移動するのは先手の負けです。
その理由は、7七に角を打たれた場合、玉が5五へ逃げることができなくなるため、結果として豊島先生の勝利につながります。
実際は、6七への逃げが安全に見えたため、木村先生はこの手を選びました。
しかし、この局面では7八に銀を打つという、銀を犠牲にする手が存在しました。この一手が決め手となりました。
木村先生にも終盤にチャンスはありましたが、時間切迫により判断を誤りました。
形勢は再び99%へと逆転し、最終的に、豊島先生が冷静さを取り戻し、正確な指し手で2連勝を飾りました。
第7局 藤井聡太竜王名人と羽生善治九段
最後に見せ場が訪れました。今大会で同率1位の成績を持つ二人の激突です。
先手の羽生先生は多様な戦型をこなすことで知られていますが、今回選んだのは藤井先生が得意とする「角換わり」でした。
羽生先生は逃げることなく、会長職を務めながらも、明らかに研究が必要な「角換わり」で不利に見える状況を乗り越え、健闘します。
研究の時間はいつ取られているのでしょうか。
この戦型は、トップ棋士である豊島先生も十分に研究していたもので、まだ、ほぼ互角の形勢の段階で、「この形は正しく指せば後手の藤井先生が勝ちます」と豊島先生が発言します。
その通りに進んで藤井先生が圧勝しました。トップ棋士の研究の深さは、改めて驚かされます。
先発棋士 予想と答え合わせ
読者の皆様、予想はどうでしたか? 「かおる」の予想は以下の通りでした。
関東Aの1番手と2番手、中部の1番手と3番手が残念ながら、逆でしたね。
かおる
関東Aの全員で戦うという方針は的中しました
このままでは、杉本先生、八代先生、服部先生が1勝も挙げずにチームが優勝する可能性があるように感じますが、実際のところどうなるのか、「かおる」は気になっています。
4月6日はチーム関東Bとチーム中部・四国が激突
4月6日(土)19時から、優勝候補のチーム関東Bとチーム中国・四国との対局が放送されます。
関東Bは予選でなかなか調子が上がらず、2位での通過は予想外でした。
しかし、ここにきて永瀬先生と増田先生の調子が上向いてきたため、次回が大変楽しみです。
森内先生も非常に強力な先発メンバーであり、森内先生を控えに置くのは贅沢な選択ですが、これがチーム関東Bの真骨頂でしょう。
前回の大会で初勝利を挙げ、意気揚々としている永瀬先生を1番手に、そして安定した力を持つ伊藤先生を2番手に予想します。
一方、中国・四国チームには、最年少棋士である藤本先生の活躍に大いに期待し、彼を1番手に推します。
2番手には頼りになる菅井先生、そして前回は不参加だった糸谷先生を3番手に予想します。フィッシャールールに強い黒田先生もいるため、監督の山崎先生にとって選手選びは難しい選択かもしれません。
「かおる」による今回の対局予想を表にまとめましたので、読者の皆様も視聴前にぜひ予想してみてください。
チーム関東B | チーム中国・四国 | |
1番手 | 永瀬拓矢九段 | 藤本渚五段 |
2番手 | 伊藤匠七段 | 菅井竜也八段 |
3番手 | 増田康宏八段 | 糸谷哲郎八段 |
4月6日の結果について、下の記事をクリック。👇