9月10日に行われた棋士編入試験第1局で、
西山朋佳女流三冠が試験官の高橋佑二郎四段と対局し、132手で見事に勝利を収めました。
これにより、五番勝負の初戦を白星で飾り、好スタートを切りました。
第2局は10月2日、試験官は山川泰熙(たいき)四段になります。
棋士編入試験とは?
棋士編入試験は、公式棋戦において10勝以上、
かつその間の勝率が6割5分以上という成績を収めた者に受験資格が与えられます。
この権利を行使すると、直近にプロ棋士になった若手棋士との五番勝負に挑み、3勝すれば合格です。
つまり、プロ棋士相手に6割5分という高い勝率を収めている時点で、実力は十分に証明されています。
あとは、形式上、5局のうち3勝すればその実力が正式に認められる、という制度です。
西山女流三冠の三段リーグでの実績
西山女流三冠は、三段リーグ経験者であり、過去に1度、14勝4敗という好成績を収めています。
通常、この成績であればプロ入りが可能ですが、
運悪くそのときは2位以内に入れず、惜しくもプロ入りを逃しました。
これまで14勝を挙げてプロになれなかった人はおらず、
当時の西山女流三冠の実力はプロ棋士に匹敵していたことがわかります。
そのため、今回の棋士編入試験に合格する実力を十分に備えていると言えるでしょう。
ちなみに、藤井聡太竜王名人の三段リーグでの成績は13勝5敗でした。
対局内容
負けられない一局に選んだ戦型は?
西山女流三冠は三間飛車、中飛車、角交換振り飛車など、
さまざまな振り飛車戦法を自在に使いこなしますが、
本局で選んだのは、彼女が最も得意とする角道を止める三間飛車でした。
自身が慣れ親しんだ戦法であり、持ち味を最大限に発揮できる戦型を選んだと言えるでしょう。
タダのところに角
鋭い一手が飛んできました。「9七角」の打ち込みです。
なんと、タダのところに角を打ってきました。
西山女流三冠らしい大胆な手です。
彼女自身は、特に自信を持って指したわけではないようですが、相手にとっては驚きだったでしょう。
普通、ただで駒を打たれたら取りたくなりますが、
将棋でも「タダほど怖いものはない」という言葉があります。
取れば、もしかしたら詰まされるかもしれないと考えると、この角は簡単には取れません。
結果として、山川四段は角を取らずに逃げる選択をしました。
実際には、取っても問題はなかったようですが、
時間に追われる中で、この選択は決して間違いではなかったと思います。
山川四段の渾身の勝負手「8五香」
最終盤、追い詰められた山川四段が放った最後の勝負手は「8五香」でした。
この時、AIは西山女流三冠の勝率を96%と示しています。
視聴者は誰もが彼女の勝利を確信していたでしょうが、実際は簡単な局面ではありませんでした。
この香車は玉でも馬でも銀でも取ることができますが、いずれも不正解です。
唯一の正解は「9五玉」とする手でした。
視聴者が固唾を飲んで見守る中、西山女流三冠は力強く、そして正確にその正解手を指しました。
さすがというほかありません。
残された持ち時間はわずか3分でしたが、見事に正解を見つけ出しました。
この圧倒的な終盤力で、彼女はこれまで数多くの男性棋士を打ち倒してきたのです。
試験官の意地
西山女流三冠に正解手を指されたことで、山川四段には有効な手が残されていませんでした。
ここで投了するかと思われましたが、彼は諦めることなく、最後の最後まで粘ります。
10手ほど粘り、ギリギリの局面まで西山女流三冠を追い詰めました。
もし歩以外の駒があれば、6四に打ち込み、山川四段の勝利でしたが、その駒がありませんでした。
これで勝負ありです。
かおる
『打ち歩詰め』と言って、歩を打って詰ますのは反則だよ!
次戦は10/2
第2局は10月2日に行われますが、その前に嬉しい対局があります。
9月15日(日)に放送されるNHK杯2回戦、藤井聡太竜王名人 対 西山女流三冠の対局です。
どのような展開になったのでしょうか。
中盤力ではかなりの差がありますが、
もし最終盤まで互角に持ち込めていれば、
終盤力に定評のある西山女流三冠にもチャンスがきているかもしれません。
放送日が待ち遠しいですね。
第2局では西山女流三冠が先手となりますので、大いに期待が持てる対局になるでしょう。
女流タイトル戦など、かなりのハードスケジュールが続いていると思われますが、ぜひ頑張ってほしいです。