3月16日に放送された第74回NHK杯将棋トーナメント決勝戦で、

先手の藤井聡太竜王名人(22)が郷田真隆九段(53)を104手で破り、2年ぶりの優勝、

さらにこの勝利でプロ棋士通算400勝を達成しました。

藤井聡太竜王名人 優勝

本局の勝利で、一般棋戦での優勝は合計11回となりました。内訳は以下の通りです。

一般棋戦での優勝履歴

戦型は角換わり

先手番の郷田九段は角換わりを選択し、自信を持って対局に臨んでいます。

一方、後手の藤井竜王・名人は最近は右玉を志向することが多いですが、

右玉

本局では早めに玉を4二へ上がり、早繰り銀で対抗していきます。

早繰り銀で対抗

解説の羽生九段も思わず『へぇ~』

44手目△4四角

8筋の歩交換から、誰もが同飛車と走ると思っていたところで、藤井竜王・名人の手が止まりました。

そして、何と△4四角と指します。これには、解説の羽生善治九段も思わず『へぇ~』と声を漏らしました。

意表の4四角打ち

この手には、先手が▲5五角と打つと角交換になり、銀が前に出るため、損になる可能性があります。実際、この手順で進行しました。

54手目△5四歩

54手目の△5四歩に、羽生九段は思わず2回『へぇ~』と声を漏らしました。

この歩の突き出しは、玉のこびん攻めが怖く、かなり勇気のいる一手だからです。

かおる

『こびん』とは、玉の斜め上のますを指すよ!

玉の斜め前に歩などの守り駒がいないことを『コビンがあいている』といい、角による王手がかりやすくなります。

本局では、王手飛車取りがかかる可能性があり、とても怖い状況です。

玉のこびん

84手目△5七銀打ち

持ち時間をすべて使い切った藤井竜王名人は、84手目△5七銀と王手をかけました。

これは直接的な一手です。

この瞬間、羽生九段の「へぇ~」という驚きの声が3回聞こえてきました。

それもそのはず。同金と取られた場合、5七桂成から同玉と進められると、攻めが途切れてしまいそうに見えます。

しかし、藤井竜王名人の読みは桁違いでした。

5七銀から王手

86手目7六桂打ち

上図から同金と応じた次の一手は、なんと7六桂打ちでした。

この手にも、羽生九段の「へぇ~」という驚きの声が漏れました。

羽生九段によると、この一手は読んでいなかっただろうとのこと。

AIの形勢判断では郷田九段がやや有利でしたが、30秒という短い持ち時間では正確に指すことができませんでした。

もちろん、藤井竜王名人は最善手▲5九玉を把握しており、感想戦でその手を示しました。

▲5八玉と逃がした手は自然に見えましたが、AI形勢は藤井竜王名人の61%となります。

驚きの7六桂打ち

流石の終盤力

86手目までは、ほぼ互角の展開が続いていました。

しかし87手目、郷田九段の▲5八玉を見た瞬間、藤井竜王名人がすかさず襲いかかりました。

藤井竜王名人も30秒将棋に入っていましたが、この時点ですでにすべてを読み切っていたようです。

気がつけば、郷田九段は受けなしの状態に追い込まれ、94手目△5七桂成を見て投了しました。

優勝1回、準優勝2回を誇る郷田九段もその実力を存分に発揮しましたが、藤井竜王名人の終盤力に屈する形となりました。

投了図104手

これで、藤井竜王名人の今年度の対局はすべて終了。

勝率が初めて8割を切ってしまったのはファンとしては残念ですが、

七冠を防衛し、一般棋戦でも優勝1回・準優勝1回と素晴らしい成績を収めました。

来期も引き続き、全力で応援していきたいと思います。