伊藤匠七段 藤井叡王への挑戦権勝ち取る

3月19日(火)10時から、第9期叡王戦(主催:株式会社不二家)の挑戦者決定戦が東京将棋会館の「特別対局室」で行われました。

先手の永瀬拓矢九段と後手の伊藤匠七段が対戦し、後手の伊藤先生が17時8分、142手で勝利し、自身3度目のタイトル挑戦を決めました。

かおる

叡王戦では、主催の不二家が対局者の横に

おやつを置いてくれるんだよ!

棋士の先生も楽しみにしているみたい

かおる

本局では、春限定「チョコまみれアメリカ編」が用意されていたんだ

今度、食べてみようかな

居飛車の研究 恐るべし

この2人の対局は今回で6回目を迎えます。意外にも、永瀬先生は対戦成績で負け越しています。

永瀬先生が若手の先生相手に負け越しているのは、藤井先生を除けば珍しいことです。これまでの対戦成績は以下の表の通りです。

2021/9/28お~いお茶杯王位戦予選相掛かり後手 永瀬拓矢先手 伊藤匠
2022/7/22棋王戦コナミグループ杯挑戦者決定トーナメント相掛かり後手 永瀬拓矢先手 伊藤匠
2023/7/31竜王戦挑戦者決定三番勝負第1局一手損角換わり後手 永瀬拓矢先手 伊藤匠
2023/8/14竜王戦挑戦者決定三番勝負第2局角換わり 右玉先手 永瀬拓矢後手 伊藤匠
2023/10/2お~いお茶杯王位戦予選角換わり腰掛け銀先手 永瀬拓矢後手 伊藤匠

昨年10月、永瀬先生は伊藤先生に対して初勝利を挙げました。

しかし、伊藤先生は昨年夏、竜王戦挑戦者決定三番勝負という重要な局面で永瀬先生に連勝していますから、この対局の戦型選択には注目が集まっていました。

先手の永瀬先生が選んだ戦型は昨年の竜王戦挑戦者決定三番勝負でも用いた「角換わり」でした。

かおる

2月の朝日杯決勝で藤井先生に勝利した戦法「矢倉」を

選択すると思ったけど、違ったね

これに対し、伊藤先生は「右玉」戦法で対抗します。

戦型は竜王戦と同様でしたが、早い段階で異なる展開になりました。永瀬先生の攻めは止まらず、81手目まで計画通りに進んだようです。

81手目までの永瀬先生の研究

41手目までの消費時間はわずか11分でした。

81手を完璧に暗記するのは大変ですし、さらに多くの変化が考えられる中で「角換わり 右玉」に対する準備は相当なものだったと思われます。

それより、この研究の恐ろしい点は、67手目に、伊藤先生の飛車が捕獲されることです。

伊藤先生の飛車が捕獲

かおる

伊藤先生、大ポカ?

飛車が取られてしまったよ

かおり

これも永瀬先生と伊藤先生の研究です!

かおる

え~

伊藤先生も顔色変えずに指してる

飛車を取られる変化も、研究の一つのようです。初めて見たら、これが互角の形勢だとは思えないですよ。

飛車が捕獲された後もサクサク進み、伊藤先生の82手目に対して永瀬先生は初めて長考に入りました。

これは永瀬先生が予定していた手順から外れたことを意味し、自身が優位に立っていると認識していたはずです。

しかし、長考の末に選んだ2五桂打ちは後悔する手となりました。

それほど悪手には見えませんが、伊藤先生はわずかなスキを見逃してくれません。

最終的には永瀬先生の玉を捕獲し、投了に追い込みました。

叡王戦五番勝負日程表

叡王戦の五番勝負の日程は以下の通りです。

第9期叡王戦対戦表

『アパホテル 佳水郷』は、第9期叡王戦からオフィシャルスポンサーとなりました。このホテルは、叡王戦の第2局の会場として選ばれています。

藤井先生が出場するタイトル戦が最終局まで行くのは、これまでの全21タイトル戦中たった1回のみです。

そのため、5番勝負である叡王戦では、第1局から第3局までのいずれかで会場として選ばれると、ホテル側や関係者は特に喜びを感じるでしょう。