1.振り出しに戻った「三番勝負」の幕開けり
徳島県・依水園。鳴門の潮風が遠く響くような静謐な空気の中、
2026年8月26日、第67期王位戦七番勝負第5局の幕が上がりました。
第4局を終えてスコアは2勝2敗のタイ。
それは、ここまでの歩みが一旦リセットされ、「振り出しに戻った新たな三番勝負」が始まったことを意味します。
研ぎ澄まされた集中力が対局室を支配する中、
王位防衛か奪取かを分かつ極限の心理戦は、格調高いこの庭園から再び動き出したのです。

午前のおやつ
| 藤井聡太王位の午前のおやつ | 伊藤匠二冠の午前のおやつ |
| 生ういろう(抹茶) マンゴージュース | アフォガードとマフィン アイスストレートティー |
| 噛むほどに広がる抹茶の上品な香りと豊かな旨味、 そしてしつこさのない控えめな甘さが絶妙な、生ういろう(抹茶)。 人気の抹茶が良さそう。 「かおる」も食べたい | ふんわりと焼き上げられたマフィンの優しい小麦の風味が加わり、 満足感の高い一皿です。 「かおる」も食べたい |
2.1日目のハイペースと「▲7七金」の意図
1日目の展開は異例でした。
午前中だけで57手が進むという、タイトル戦の常識を覆すハイペース。
藤井王位が主導権を握るべく選んだのは、AIの推奨する一本道の攻めではなく、
人間心理の隙間を縫うような「間(ま)」の取り方でした。
特に象徴的だったのが、藤井王位自身が「手渡しで、本意ではなかった」と振り返る59手目の▲7七金です。
このあえて決定的な一手を遅らせるような「待ち駒」が、挑戦者のリズムを静かに狂わせました。
伊藤二冠は「駒組みに問題があったかもしれない」
「難しい呼吸で指されて、つかみきれなかった」と、
対局後にその心理的苦悩を吐露しました。
感情のないAIには計算し尽くせない、人間同士の対局ゆえに生じる「呼吸のずれ」。
藤井王位が放った一見不可解な「金」の動きは、最強のライバルを迷宮へと誘い込む高度な心理戦の要となったのです。
ランチ
| 藤井聡太王位のランチ | 伊藤匠二冠のランチ |
| 阿波牛のボロネーゼ、ウーロン茶 | 阿波牛のボロネーゼ、ウーロン茶 |
| 噛むほどに溢れ出す阿波牛の豊かな旨味と肉々しいジューシーさが、 じっくり煮込まれたコク深いトマトソースと見事に絡み合います。 モチモチのパスタに濃密な肉の旨味がしっかりと乗った、 スタミナと満足感溢れる極上の一皿です。 「かおる」も食べたい | 盤上では火花を散らすバチバチの盤外戦術でありながら、 盤外では図らずも最高の一皿で共鳴し合っている姿に、 現代将棋の頂点に立つ二人のシンパシーを感じずにはいられません。 午後の戦いもますます楽しみになりますね! 「かおる」も食べたい |
3.最強の駒「馬」を捨てる決断
2日目の局面は、藤井王位の「合理性」と「大胆さ」が同居するドラマチックな変遷を見せました。
局面の焦点は、藤井王位が手塩にかけて作った最強の攻撃駒「馬」の扱いにありました。
立会人の中田功八段が、12時過ぎの局面で放たれた▲6五歩を「馬の生還を目指した好手」と高く評価したように、
当初の藤井王位は馬を救出し、その圧倒的な機動力を維持することで優位を確立しようとしていました。
しかし、伊藤二冠が必死の受けに回り、馬を封じ込めにきた瞬間、藤井王位は迷わず舵を切ります。
温存していた馬を銀と交換し、あっさりと切り飛ばしたのです。
「寄せまで視野に入っている」
中田八段がそう確信した通り、最強の駒という「執着」を捨て、最短距離の勝ち筋を選び取る「勝利への断捨離」。
この冷徹なまでの切り替えが、伊藤陣を崩壊させました。
4.「会心譜」と呼ばれた歩の魔術
15時38分、93手という短手数での終局。
控え室で専門家たちが驚嘆したのは、藤井将棋の「歩」の精度でした。
特に8筋の歩を突き捨て、持ち駒とした歩を8二へ打つといった一連の手順は、
最強の守備駒を翻弄し、決定的な8三角の打ち込みを呼び込む「魔術」そのものでした。
立会人の中田功八段は、本局を迷いなくこう総括しました。
「本局は藤井王位の歩の使い方がうまかったです。会心譜になりました」
「会心譜」——それは、プロの目から見ても非の打ち所がない完璧な名局を指す言葉です。
最強のライバルである伊藤二冠を相手に、基本の駒である「歩」で圧倒した事実は、藤井将棋が新たな次元に達したことを示しています。
