2026年10月9日、東京・セルリアンタワー能楽堂にて第39期竜王戦七番勝負第1局が開幕しました。
タイトル6連覇を目指す藤井聡太竜王に対し、挑戦者として名乗りを上げたのが服部慎一郎七段です。
服部七段にとっては棋聖戦に続く2度目のタイトル挑戦となります。
現地の大盤解説で渡辺明九段が明かした興味深い裏話が、将棋界における「関東」と「関西」の棋風文化の違いです。
- 関東の棋風:「永瀬グループ」や「佐々木勇気グループ」に代表されるように、事前研究会で高度に練り上げられた定跡や序盤研究を重視する傾向。
- 関西の棋風:糸谷哲郎九段や山崎隆之九段らに象徴されるように、定跡を外した「力将棋(力戦形)」や中終盤の実戦力で勝負する風潮。
関西で揉まれて育った服部七段も力戦調を得意とする棋士です。
本局でも定跡通りに進む角換わりを明確に拒否し、お互いが手探りで長考を重ねる力戦系の相がかり模様へと引き込んでいきました。

構想力が問われる中盤戦:力戦形相がかりと「▲7七桂〜▲9七角」
1日目の序盤、服部七段は角の利きにいきなり突き出す意表の△4四歩を指しました。
あえて2歩損を受け入れてでも手得を生かそうとする積極的な構想です。
対する藤井竜王の凄みは、その後の陣形構想力にありました。
- あえて歩交換を許す:藤井竜王は相手に8筋の歩交換を許す代わりに、自身は堅牢な銀冠の囲いへと組み替えていきました。
- 柔軟な角の活用(▲7七桂〜▲9七角):2日目、7七の位置で押さえ込まれていた角を一度▲8八角と引き、▲7七桂から▲9七角と端へ展開。遠くから相手陣を狙う柔軟な構想を披露しました。
立会人の森内俊之九段も「▲7七桂から▲9七角は柔軟な発想。後手は玉を囲いたいが間に合わず、先手ペースの中盤戦」と評しています。
封じ手の裏ドラマと勝負の決着:「▲5三銀」の一撃
2日制対局の初日終了時、服部七段にとって人生初となる「封じ手」が行われました。
ここでタイトル戦ならではの微笑ましいハプニングが起こります。
服部七段は封筒の継ぎ目に押す割り印をし忘れてしまい、立会人の森内九段から教わる場面がありました。
さらに用紙を珍しい「正方形型の四つ折り」にして封筒の底に収めたため、翌朝開封時に森内九段が「封じ手紙が入っていない!?」と一瞬慌てるという裏ドラマも生まれました。
2日目の午後は双方休憩なしの激闘が続きました。服部七段は辛抱の歩を打ち、我慢強く耐えてチャンスを待ちます。
しかし、藤井竜王が放った▲5三銀が服部七段の盲点を突く決定打となりました。
服部七段自身も局後「▲5三銀を軽視してしまい、最後はポッキリいってしまった」と悔やんだこの鮮やかな打ち込みにより、
113手で藤井竜王が勝利。防衛に向けて大きな1勝を挙げました。
