1.角換わりと藤井穴熊の構造

京都・右京区の総本山仁和寺宸殿という格調高い舞台で始まった竜王戦第3局。

2連敗と後がない挑戦者の服部慎一郎七段は、厳しい星勘定ながら先手の藤井聡太竜王が得意とする戦法を受け立つ覚悟で挑みました。

盤上は初手▲2六歩から、後手から角を交換する「角換わり」の戦型へ進行します。

服部七段は序盤、玉を左右に動かして様子を見る「手待ち」の姿勢を見せましたが、

藤井竜王はこの隙を逃さず、▲8八金から▲7八銀と組み上げる「穴熊」を目指しました。

将棋の穴熊は王を陣地の最奥に囲う非常に堅固な陣形ですが、

構築に時間がかかる点と、端(9筋)からの攻撃に弱いという構造的特徴があります。

藤井竜王は1時間以上の大長考の末に▲4六角という意表を突く打ち込みを敢行し、控室の検討陣を大いに沸かせました。

第39期竜王戦第3局

2.封じ手の謎と勝負を決めた終盤の攻防

通常、封じ手用紙は二つ折りや四つ折りにされますが、服部七段は「三つ折り」を選択。

しかも2通の用紙で「山折り」と「谷折り」の位置が異なっており、検討室では「新手筋か」と笑顔で語られる初々しいひと幕となりました。

2日目の対局再開後、局面は激しい攻め合いへと突入します。

服部七段は穴熊の弱点である端から△9七歩▲同歩△9六歩▲同香△8四桂と反撃を試みました。

これに対し藤井竜王は冷静に▲5四桂と王手で切り返し、自陣の硬さを利用した猛攻を開始します。

服部七段も「忍術」と称される粘り強い受け(△5三銀)で囲いを再構築し、形勢を押し戻そうと抵抗しました。

しかし、108手目の△5三角が悔やまれる手となり、

直後に藤井竜王が放った決定打▲2二歩により、119手で先手・藤井竜王の勝利が決まりました。

3.勝負飯・おやつと仁和寺のハプニング

タイトル戦の醍醐味は、盤上の高度な頭脳戦だけにとどまりません。

対局者が選ぶ「勝負飯」や「おやつ」、そして対局場で起きる予測不能なハプニングも、将棋ファンを魅了する大切な要素です。

1日目の昼食対決では、藤井竜王が豪華な「チラシ寿司」を選んだのに対し、

服部七段は「京風和牛丼とにしんそば」を注文。

2日目には、対局場がお寺である仁和寺にちなみ、藤井竜王が車麩をカツに見立てた「精進カツ丼」、

服部七段が「ヴィーガンカレー」を注文し、

共に精進料理ベースの勝負飯で集中力を高めました。

また、対局室となった仁和寺の宸殿には、勝負所で巨大なカメムシが出没するハプニングが発生。

仏門の教えに則り「殺生なし」で仁和寺の僧侶たちが紙コップを使ってキャッチ&リリースし、無事に問題を解決しました。

4.まとめと振り返り

第39期竜王戦第3局は、藤井聡太竜王が圧倒的な読みの深さと攻めの鋭さを発揮し、

119手で服部慎一郎七段を下してシリーズ3連勝を飾りました。

角換わり穴熊の重厚な構想から、封じ手にまつわるエピソード、

勝負飯や仁和寺のハプニングに至るまで、

タイトル戦の奥深い魅力を凝縮した一戦でした。